春になり、色とりどりな花が咲き乱れ、ウキウキする季節が到来した。そんな雰囲気の中で、私の担当患者Aさんの心にも花が咲いた。 Aさんは60代前半の女性。普段はあまりフェミニンな感じではなく、ショートカットで、恋愛ドラマよりもスポーツ観戦が好きな統合失調症の患者さんだ。20ほど歳下の男性Bさんに恋をしてしまったようだ。Bさんは、優しそうな顔をした爽やかイケメンで、少し話したくらいでは精神科の病気を患っているようには感じられない。 Aさんは、Bさんがデイルームに行けばデイルームに、OT室にいけばOT室に、中庭に行けば中庭について行くという、わかりやすい行動で、すっかり恋する乙女になっていた。しかしただの恋する乙女ではなく、長年精神科病院で過ごしたことからあまり恋愛経験がなく、好きな相手に対する適切な距離感というものをこれまで学んでこなかったため、側から見るとまるでストーカーのようになってしまって