同級生の話。 山を歩いていると、急に便意に襲われた。 それ以上歩くことも適わず、仕方なく道傍の藪で用を足すことにする。 思いを遂げ、しゃがんだまま一息ついたその直後。 ガサリ、と目の前で音がした。 慌てて顔を上げた彼の前には、大きな一頭の奇妙な猪がいた。 身体中が黒と灰色の斑毛で覆われている。 おかしいのはその顔だった。 ピンクの鼻の直ぐ後ろから、何本もの白い角が額に向けて伸びていた。 角の付け根からは、黒い粘液がグチグチと流れている様子。血だろうか? しばし無言で睨み合う。 と、猪が口を半開きにした時、全ての角の根が口の中に繋がっているのが見えた。 ・・・あれは角ではない。 下顎の長い牙が、上顎の肉を突き破って、更に伸び上がっているのだ。 「そんなんで飯食えるのか?」 身動きできない自分の体勢も忘れて、思わず猪に話し掛けた。 猪は「詰まらないことを聞く」とでもいうように鼻をフンと鳴らし、