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【井上章一氏書評】歌舞伎役者が「男だけ」なのは最近のこと
【書評】『歌舞伎に女優がいた時代』/小谷野敦・著/中公新書ラクレ/880円+税 【評者】井上章一(国... 【書評】『歌舞伎に女優がいた時代』/小谷野敦・著/中公新書ラクレ/880円+税 【評者】井上章一(国際日本文化研究センター教授) かつて、歌舞伎の舞台には、女たちもあがっていた。そう聞かされて、江戸初期の出雲阿国を想いうかべる人は、少なくあるまい。彼女がはじめた女の歌舞伎は、いわゆる遊女歌舞伎を誘発する。しかし、それらは風儀をみだすと、幕府から禁止された。男だけが演じ手となる今日の歌舞伎は、そんな統制のせいで成立する。以上のように歴史の流れをとらえている人も、おおぜいいるだろう。 しかし、出雲阿国の芸能が、のちの歌舞伎とつながるかどうかは、うたがわしい。あれは、女たちがになってきた中世芸能史の延長上に、浮上した。江戸歌舞伎の前身とは言いがたいところもある。 また、江戸時代にも、女だけで演じられた芝居はあった。しかも、彼女らは江戸城の大奥や大名家の奥に、しばしばまねきいれられている。好き心が
2020/04/10 リンク