「よ~し、もう一本いくよ~っ!」ハルウララは今日も楽しそうにターフを走っている。週末に行われたレースでは9頭中8着、最下位ではないが目覚ましい活躍とは言えない。「今回はひとり追い越したよ~!エッヘン!」と本人は誇らしげだったが、俺にはわかる。悔しくないはずがない。傍で見ている俺が一番よくわかる。これだけ努力しても結果に結びつかないのなら、いつ心が折れてもおかしくない。それなのに、彼女は「次」のことだけを考えている。「ウララ、なにかあったらすぐに言うんだぞ」”どーじょーやぶり”に負けた彼女に、俺はそんな言葉をかけた。「えっ?うーん、じゃあもう一本だけ、走ってきていい?」いいよ、と言う前に、通りがかったキングヘイローを捕まえて駆け出していった。トレーナーの俺が先に折れてどうする。俺にできること、それは彼女を支え、勝たせてやることだ。ハルウララが前を向くかぎり、俺もそれに応えよう。満開に咲く彼女