音楽家魂? 何ですか、それは? たとえて言えば、「弘法は筆を選ばず」ということです。そこに聴衆がいれば、どんな劣悪なコンディションでも、最高の音楽を奏でるのだという意思とそれを実現する能力のことです。考えてみれば、これは音楽家や書道家だけのことではないかもしれません。いかなる分野のいかなる仕事であれ、時に想定外の状況に直面することがあります。プロフェッショナルとしては、矜持をもって最良の結果を出す、ということです。 ちょっと格好良すぎませんか? まあ、そうありたいという心構えです。 体調もピアノの状態も最悪だった それで、キース・ジャレットに戻ります。「ケルン・コンサート」は、1975年1月24日の深夜11時30分から約67分間の出来事を録音したものです。実は、この時のキース・ジャレットの体調も用意されていたピアノの状態も最悪でした。コンサート自体、キャンセルされてもおかしくなかったほどで