東浩紀/批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。 * * * トーマス・アッシュ監督のドキュメンタリー映画「牛久」を観(み)た。茨城県牛久市にある入管外国人収容施設の実態に迫る問題作である。 日本は、在留資格がない外国人を原則入管施設に収容する政策を採用している(全件収容主義)。期間にも定めがない。そのため一部外国人については収容が長期化し、かねてより人権侵害が指摘されてきた。今年3月に名古屋入管でスリランカ人女性が死亡した事件は大きな社会問題となり、国会でも議論された。 「牛久」はそんな長期収容者たちの姿を、面会場面の隠し撮りを中心に追いかけている。登場人物はみな実名で顔も出している。配偶者と引き裂かれ、鬱(うつ)になり自殺未遂を繰り返す中年男性がいる。仮放免を得るため無