古代エジプト数学の特徴の一つは、エジプト分数と呼ばれる数を用いていることです。「エジプト分数は、幼稚で制限の多い方法だ」という意見をこれまでよく聞きました。“数”は一度習得して慣れてしまうと異質のものはなかなか受け入れがたいものです。現代人の私たちから見れば、原始的で奇妙な方法に見えるかもしれませんが、先入観を持たずにまずよく理解することが必要です。エジプト分数はとても理にかなった記数法ですし、アルキメデス※のようなヘレニズム期の数学者たちや、フィボナッチ※など中世ヨーロッパの数学者もエジプト分数を用いています。古代エジプトの人々が扱っていたエジプト分数とはどのようなものなのかを見てみましょう。 古代エジプトの数学書リンド・パピルス※には「何個かのパンを何人かで等分する」という問題がいくつか収録されています。例えば、「5個のパンがある。8人に公平にわけなさい」というような問題です。この問題