まつもと・はじむ 1970年生まれ。神戸新聞社で震災や行政報道を担当。2006年退社。『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』で19年に本田靖春ノンフィクション賞受賞。 事件事故や災害の犠牲者について、どこまで報じるべきか。取材という行為で、遺族の心情や地域の生活を踏み荒らしてよいのか。京都アニメーション放火殺人事件の報道に当たる京都新聞記者たちの葛藤を綴(つづ)った連載を読みながら、同じく地方紙の記者だった自分自身の経験がいや応なくよみがえってきた。 1997年の初夏、神戸市須磨区のニュータウンを連日歩き回った。「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」の名で記憶される連続児童殺傷事件で現場取材班に投入され、右往左往していたのだった。 14歳の少年が逮捕された夜のことは、とりわけ苦い記憶だ。一報を受けて後輩記者と被害者宅に向かうと、他社の記者はまだ誰もいなかった。インターホン越しに「