先日、師範を務めている両国将棋センターで指導対局をした。 子どもの頃、この場所でいたずらばかりしていた私は、いつも「師範」という2文字をくすぐったく思ってしまう。私にとってのこの場所は、思い出が深すぎるのだ。 初めて行った道場は将棋会館道場。母に連れられて行き、10級の認定証をもらった。小学1年か2年生の頃である。私を最初に強くしてくれたのは、名前も知らないオジサンだった。 「お嬢ちゃん、将棋指せるの? よし、オッちゃんが教えてやろう!」 言葉だけ書くと、実にあやしいセリフである。まぁ実際は「オッちゃん」とは言っておらず、「私」だったのだが。 それでも、いま私が親として同じ状況に置かれたら、娘に将棋を教えてもらうかは、少し迷うかもしれない。平成で言えばひと桁のこの頃は、今より色々なことが緩かった。世の中は、悪く言えば適当だったし、良く言えば自由だったのだろう。 オジサンは将棋の基礎を教えて