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文学の検索結果1 - 15 件 / 15件

  • 110年前の女性の投書「女にモテない夫を持った私の感想」

    文通相手を探していたところ、1914年(大正3年)に出版された少女向け雑誌『處女』(処女の旧字)を発見した。 この雑誌は大正時代の少女が読者投稿を行うものであり、文通相手の募集も紙面で行われていたのだ。 しかし文通を出そうにも紙面に住所を書いている少女たちはもうほとんどが死んでいるので、しかたなく1914年『處女』9月号に掲載されていた投書を読んでいたところ、ある女性が「女にもてない夫を持つた私の感想」というものを投稿していた。 最初は単なる愚痴かと思ったが、読み込むうちになんかなんだか気分が落ち込んでしまった。 とりあえず書き起こすことにする。 「女にもてない夫を持った私の感想」投稿者:宇佐美米子 私がこの家に嫁いでからもう今年でちょうど5年になります。夢のように過ぎた5年の間には可成(かなり)色々な事がありましたが、楽しいことも悲しい事もみな断片のことであって、私の心に根深く止まってい

      110年前の女性の投書「女にモテない夫を持った私の感想」
    • やり直せない過去は変えてしまえばいい『グレート・ギャッツビー』

      おっさんになって再読すると、違った面が浮かび上がって面白い。 若いころに読んだときは、自己中男の醜さや、頭空っぽの女の美しさが印象的だった。自己陶酔的な語り手に鼻白んだことも覚えている。 だが、いま読み返すと、ギャッツビーのひたむきな愛が眩しく、可愛そうなくらい未熟で愚かに見える。人生を折り返して、やり直したくてもできなくなった親爺からすると、ギャッツビーの愚かしさは、一周回って愛おしいものになる。 ギャッツビーを「愚か」というのは言い過ぎじゃない? そういうツッコミが聞こえる。 貧乏な生まれながら身一つでのし上がって大金持ちになったギャッツビーが、有り余るカネを湯水のように使って夜な夜なパーティを開く―――愚かに見えるかもしれないが、ちゃんと理由があるからで、それを「愚か」と呼ぶのは言い過ぎだろう……というツッコミだ。 しかし、私が「愚か」と感じるのは、そこじゃない。例えば、語り手である

        やり直せない過去は変えてしまえばいい『グレート・ギャッツビー』
      • 国会図書館デジタルコレクションで見る明治時代の新撰組の扱い

        明治時代に新撰組が庶民からどのように思われていたのかを調べるために、庶民の目に触れていそうな(?)雑誌の記事だとか読み物だとかを抜粋していく。 明治10年『昔今豪雄見競鑑』こちらは明治10年頃の「番付表」を集めた書籍のようだ。 『昔今豪雄見競鑑』は歴史上の英雄と明治期の英雄を対比したものだが「都ノ猛勇 悪源太義平」と並んで「脱走ノ勇士 近藤勇」とある。 近藤勇ってどっかから脱走したっけ?と思ったが、幕府瓦解後の旧幕府軍のことを「脱走方」と言ったらしいのでそのことだろう。 同じく「古今英雄競」「本朝今昔英雄鑑」「古今英雄三幅対」などにも近藤勇の名が挙がっている。 このような番付でよく名前が挙がる程度には知られていたらしい。 明治16年『徳川義臣伝』岡田霞船まずは近藤勇について。 近藤勇は武勇衆に秀で当時其英名尤も人に知られり新徴組の隊長となりて始め京師に在り又大坂に退き伏見の戦ひ幕兵乱るる中

          国会図書館デジタルコレクションで見る明治時代の新撰組の扱い
        • 海外文学入門者に贈る海外文学の買い方、選び方、探し方【レーベル解説編】 - ウラジーミルの微笑

          もうすぐ絶滅するというリアルの書店に寄せて(下) この記事は、海外文学の世界を渉猟するためのガイドマップとなることを目指している。 後編である本稿では、各出版社/各種レーベルの解説記事を載せている。なお、いずれも書き手の強い独断と偏見で書いているため、異なる意見もあるかもしれない。また、取捨選択をして書いているため、網羅性はない。そのあたりはぜひご容赦いただきたい。 前編には海外文学にまつわる基本情報を書いているので、そちらも併せてお読みいただきたい。 岩波書店 重版出来 言わずと知れた老舗出版社。我が国の「文庫」の創始者である。海外文学に関しては、「文庫書下ろし」*1が多いが、現代文学作品がまれに単行本で刊行されることもある。 出版社URL:https://www.iwanami.co.jp/ 直販サイト:なし(出版社サイトから注文は可) 岩波文庫 帯*2の色でジャンル分けをしており、白

            海外文学入門者に贈る海外文学の買い方、選び方、探し方【レーベル解説編】 - ウラジーミルの微笑
          • リメイク版「ウィザードリィ」発売記念対談。ロバート・ウッドヘッド氏とベニー松山氏が語る,灰と青春の40年

            リメイク版「ウィザードリィ」発売記念対談。ロバート・ウッドヘッド氏とベニー松山氏が語る,灰と青春の40年 ライター:森瀬 繚 カメラマン:佐々木秀二 ダンジョンRPGの古典「Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord」のリメイク版(PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Xbox One / Switch)が,2024年5月23日に正式リリースされた。 1981年に発売された初代Apple II版をベースに,のちに発売されたファミリーコンピュータ版(1987年)などの移植作品の要素も加味しながら生まれ変わった同作は,開発陣の情熱のほどがうかがえる,力の入ったリメイクとなっている。 その力の入りっぷりは先に掲載したインプレッションに詳しいので,そちらを参照してもらうとして,本稿ではリメイク版の発売を記念して行われた

              リメイク版「ウィザードリィ」発売記念対談。ロバート・ウッドヘッド氏とベニー松山氏が語る,灰と青春の40年
            • 「名刺はいりませんか」 その声の方へ顔を向けると、駅前でスーツ姿の女の..

              「名刺はいりませんか」 その声の方へ顔を向けると、駅前でスーツ姿の女の子が声をあげている 「名刺はいりませんか」 みなは何が起きるのか知っているらしく、顔を背けて通り過ぎる 「名刺を配りきらないと帰れないんです」 それでも彼女に声をかける人はいない 雪の降る街に彼女の声が消えてゆく 見かねた私は彼女に近づき、マッチをひと箱差し出した 彼女はひとつ礼を言うと、マッチを擦り持っていた名刺に火をつけた すると不思議なことに、その炎の中にひとつの情景が浮かんできた 誰かが机に向かってぺこぺことお辞儀をしている と、火が消えると同時にその光景もフッと消えた 彼女はもう一つマッチを取り出して名刺に火をつける 今度はたくさんの人が直立不動で並び、ひたすらに何かを叫んでいる と、その中に彼女らしき人を見つけたと同時に炎が消えた それから彼女がひとつ名刺を燃やすたび、様々な幻影が現れた 電話をかける姿 スー

                「名刺はいりませんか」 その声の方へ顔を向けると、駅前でスーツ姿の女の..
              • 海外文学入門者に贈る海外文学の買い方、選び方、探し方【基礎編】 - ウラジーミルの微笑

                もうすぐ絶滅するというリアルの書店に寄せて(上) この記事は、海外文学の世界を渉猟するためのガイドマップとなることを目指している。 前編として海外文学にまつわる基本情報を、後編として各出版社/各種レーベルの解説記事を載せている。なお、この記事の末尾には執筆の動機を示した前書きを置いている。 なぜ海外文学か 最初に、なぜ日本語で書かれた作品がこれほど沢山存在しているのに、敢えて外国語で書かれた作品を偏愛するのかを述べておこう。 一つ目の理由は、それが知的好奇心を満たしてくれるからである。特に、馴染みの薄い国の文化・歴史を知ることができる点は、間違いなく海外文学の楽しみの一つに数えられるだろう。歴史好きか、あるいは外国文化に興味がある人であれば、ハマれる要素は十分にある。私はヒキコモリの出不精で旅行は嫌いだが、紙と想像の次元で世界中を飛び回るのは大好きである。 もう一つの理由は、端的に作品のレ

                  海外文学入門者に贈る海外文学の買い方、選び方、探し方【基礎編】 - ウラジーミルの微笑
                • 千葉集「わたしの海外野球SF短編ベストナイン」ショートver.公開! 『野球SF傑作選』より | VG+ (バゴプラ)

                  『野球SF傑作選』よりコラムのショートver.を公開! 現代野球SF短編の傑作を集めた齋藤隼飛編『野球SF傑作選 ベストナイン2024』が2024年5月27日に発売された。新井素子「阪神が、勝ってしまった」、小松左京「星野球」といった野球SFの名作から、溝渕久美子「サクリファイス」、関元聡「月はさまよう銀の小石」といった新鋭による傑作まで、“今読んで面白い”野球SFが9編収録されている。 野球SF傑作選 ベストナイン2024 (Kaguya Books) 社会評論社 ¥1,650 (2024/06/11 16:22:35時点 Amazon調べ-詳細) Amazon 『野球SF傑作選』の魅力はそれだけではない。高山羽根子によるエッセイ「永遠の球技」や磯上竜也による作品解説など、小説以外のコンテンツも充実している。 今回は、本書に収録され、高い評価を受けている千葉集のコラム「わたしの海外野球S

                    千葉集「わたしの海外野球SF短編ベストナイン」ショートver.公開! 『野球SF傑作選』より | VG+ (バゴプラ)
                  • 来年秋から放送の朝ドラは「ばけばけ」 小泉八雲の妻がモデル | NHK

                    来年、2025年の秋から放送されるNHKの連続テレビ小説は、明治時代の作家、小泉八雲の妻、小泉セツをモデルにした、「ばけばけ」に決まりました。 113作目となる連続テレビ小説「ばけばけ」は、「怪談」などの著作で知られ、日本の伝統や文化を海外に紹介した明治時代の作家、小泉八雲=ラフカディオ・ハーンの妻の小泉セツをモデルにしたドラマです。 武士の時代が終わった明治初期、松江藩の没落士族の娘が、世界を転々とした末に日本にたどり着いた外国人の英語教師と出会います。 急速に西洋化が進み、人々の暮らしや価値観が変わっていく明治の日本で、夫婦は、埋もれてきた名もなき人々の心の物語に光を当てて語り継ぎます。 ドラマの舞台は、ヒロインが生まれ育つ島根県から、熊本など各地に移り変わっていきます。 脚本を担当するのは、数々の映画や舞台などを手がけ、Eテレ「みいつけた!」でも知られる、ふじきみつ彦さんです。 ふじ

                      来年秋から放送の朝ドラは「ばけばけ」 小泉八雲の妻がモデル | NHK
                    • ラテンアメリカ文学の傑作『百年の孤独』文庫版の装幀が解禁 筒井康隆が解説を寄稿

                      ガルシア=マルケスによる世界的ベストセラー『百年の孤独』『百年の孤独』は、1967年にアルゼンチンのスダメリカナ社から刊行され、現在まで46言語に翻訳されて5000万部を売り上げている世界的ベストセラー。 Netflixが映像化の権利を獲得するなど、今なお大きな話題を呼んでいる。世界の名だたる作家たちが賛辞を惜しまず、その影響下にあることを公言している世界文学屈指の名著だ。 Netflix実写作品の公式予告 作者のガブリエル・ガルシア=マルケスさんは、1927年コロンビア生まれ。ボゴタ大学法学部中退。新聞記者として欧州各地を転々としたのち、1955年に処女作『落葉』でデビューした。 1967年に『百年の孤独』を刊行すると、一躍世界的な注目を集めると、『族長の秋』『予告された殺人の記録』『コレラの時代の愛』『迷宮の将軍』など、次々と歴史的傑作を発表し、1982年にはノーベル文学賞を受賞してい

                        ラテンアメリカ文学の傑作『百年の孤独』文庫版の装幀が解禁 筒井康隆が解説を寄稿
                      • ダンボールをすっぽり被って世界を覗き見る…『箱男』8月23日公開|シネマトゥデイ

                        映画『箱男』ポスタービジュアル - (c) 2024 The Box Man Film Partners 安部公房の同名小説を石井岳龍監督が映像化した映画『箱男』が8月23日より全国公開されることが決まり、ポスタービジュアルと予告編が公開された。 【動画】『箱男』予告編 箱男とは、ダンボールを頭からすっぽりと被り、一方的に世界を覗き見る、社会の螺旋から外れた存在。カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、箱男としての一歩を踏み出す。しかし、本物の箱男になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。存在を乗っ取ろうとするニセ箱男(浅野忠信)、完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市)、そして“わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)。果たして“わたし”は本物の箱男になれるのだろうか? ADVERTISEMENT これまでヨーロッパやハ

                          ダンボールをすっぽり被って世界を覗き見る…『箱男』8月23日公開|シネマトゥデイ
                        • 中上健次『異族』―足かけ9年の連載・ついに完結しなかった大作 | 小説丸

                          「担当編集者だけが知っている中上健次」の9回目。1984年、文芸誌「群像」に連載開始された『異族』は壮大な長編作品として、足かけ9年にわたり連載されたものの、ついに完結を見なかった中上健次の遺作のひとつです。当時、「群像」編集部で『異族』を担当した三木卓氏が、中上健次との熱い日々を語ります。 未完の大作『異族』誕生秘話 中上健次電子全集第18巻に収録された『異族』は、『鰐の聖域』『熱風』『大洪水』とならび、中上の早世によって未完のまま遺作となった作品の一つで、1984年から1992年まで、足かけ9年にわたり「群像」に連載された中上にとって最長の作品。残り原稿用紙にしてわずか百枚足らずのところで完成を見なかったのです。 「路地」に生を受けたタツヤ、在日韓国人二世のシム、アイヌモシリのウタリなど胸に青アザ(旧満州国の地図に擬せられる)を持つ複数の登場人物が、右翼の大物に導かれ、満州国再興のミッ

                            中上健次『異族』―足かけ9年の連載・ついに完結しなかった大作 | 小説丸
                          • 安部公房原作の映画『箱男』8月公開 箱を纏った匿名的なビジュアルが不審

                            映画『箱男』8月23日(金)に劇場公開される。 この映画は、小説家・安部公房さんの同名小説を原作とした作品。監督は、安部公房さんから直接映画化を託された石井岳龍さん。 主演は永瀬正敏さん。その他にも佐藤浩市さんや浅野忠信さん、白本彩奈さんらの実力派俳優が名を連ねる。 8/23公開『箱男』予告編 公開されたポスターと予告編では、段ボールを頭から被った強烈なビジュアルが確認できる。 前衛的な作風で高い評価を獲得した小説『箱男』安部公房さんは、『砂の女』や芥川賞受賞作の『壁 - S・カルマ氏の犯罪』 などでも知られる小説家。 『箱男』は1973年に発表された小説で、語り手が目まぐるしく変わり、時系列も前後する実験的で複雑な構造を特色とする。原作は、ダンボールの箱を頭から被り、その覗き窓から外を見つめて都市を彷徨う「箱男」の記録という構成。 見る/見られるという関係や、匿名性について考察する内容で

                              安部公房原作の映画『箱男』8月公開 箱を纏った匿名的なビジュアルが不審
                            • 『異族』(中上 健次):講談社文芸文庫 製品詳細 講談社BOOK倶楽部

                              空手道場に集まった胸に同じ形の青あざがある頑強な三人の男たち、路地に生まれたタツヤ、在日韓国人二世のシム、アイヌモシリのウタリ。そのアザの形に旧満州の地図を重ね見た右翼の大物フィクサー槙野原は三勇士による満州国の再建を説く。日本の共同体のなかにひそむうめき声を路地の神話に書きつづけた中上健次が新しい跳躍を目指しながらも、「群像」連載中急逝し、未完に終わった傑作大長篇小説。死してなお生き、未完ゆえに無限増殖する壮大なる中上サーガ。

                                『異族』(中上 健次):講談社文芸文庫 製品詳細 講談社BOOK倶楽部
                              • 『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム フォークナー (著), 篠田 一士 (訳) アメリカという国の、その根底にある狂気について。資本主義の根っこにある狂気について。考えてしまった。|原 正樹

                                『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム フォークナー (著), 篠田 一士 (訳) アメリカという国の、その根底にある狂気について。資本主義の根っこにある狂気について。考えてしまった。 『アブサロム、アブサロム!』 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9 Amazon内容紹介南部の差別と人間の苦悩を描く ノーベル賞作家の代表作 アメリカ南部の田舎町に姿を現した男サトペンが、巨大な屋敷と荘園を建設し、自らの家系を築きあげる。南北戦争をはさんで展開される繁栄と没落の物語。重層的な語りの中に、呪われた血の歴史が浮かびあがる壮大なサーガ。 〈ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹〉 フォークナーは密度が高い。人と人の距離が近く、愛も憎悪も野心も欲望も強烈。登場人物の人柄はどれも忘れがたい。ぼくにとって『アブサロム、アブサロム!』を精読した記憶は、どこかの町で一年暮らしたのと同じくらいの重さがある

                                  『アブサロム、アブサロム!』ウィリアム フォークナー (著), 篠田 一士 (訳) アメリカという国の、その根底にある狂気について。資本主義の根っこにある狂気について。考えてしまった。|原 正樹
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