静かな夜、月明かりが窓から差し込む部屋で、藍子は一枚の古い扇を手に取った。 その扇は、彼女の祖母から受け継いだもので、鮮やかな青とピンクの花が描かれていた。 藍子は、扇を開くと、不思議なことに部屋の空気が変わり始めた。 壁にかかっていた絵画が生き生きと動き出し、床に散らばる花びらが舞い上がり、 彼女を包み込んだ。 「これは…夢?」藍子は囁いた。 しかし、これは夢ではなかった。 扇は魔法の力を秘めており、藍子を幻想的な世界へと導いたのだ。 彼女は、自分が描かれた扇の世界に立っていることに気づいた。 周りは桜の花が満開で、空は永遠に薄紅色に染まっていた。 藍子は、扇を持って踊り始めた。 彼女の動きに合わせて、風が吹き、花びらが舞い、音楽が聞こえてきた。 それは、祖母がよく口ずさんでいた古い歌だった。 藍子は、その歌を覚えており、自然と口から歌詞が流れ出た。 歌うたびに、新しい花が咲き、世界がさ