国道16号線は、神奈川県の三浦半島から千葉県の房総半島まで、首都圏を中心にぐるりと環状に結ぶ道路だ。 私が卒業した多摩美術大学は神奈川の橋本駅と東京の八王子駅の間の鑓水にある。16号線沿いで、養蚕が栄えた場所でもある。1960年代、学生運動が激しかった大学を都市部から引きはがす目的で東京の郊外へ移転させたと本書にはある。そのとき都心から通える距離として選ばれたのが多摩から八王子にかけての東京西部だった。 同様に主要な美大である武蔵野美術大学・女子美術大学・東京造形大学も存在する。そんな土壌は、いわゆる田舎と都会のはざまにある、少しむずがゆい場所だった。 23区内と違い、これらの場所は山や丘、湿地も多く、本書でいうマイルドヤンキーと呼ばれる人たちも多数存在し、郊外に住むこのイメージは映画「跳んで埼玉」の風景と重なる。 著者は恩師である慶応義塾大学・岸由二名誉教授の「流域思考」をベースに、16