社会のなかで生きるということは、つねに葛藤をはらんでいる。人は自分の人生しか生きられないが、他者と関わらなければ生きていけない。他者と生きることは心強くもあるが、同時にわずらわしくもある。 そうした葛藤と向きあって生まれた映画が『アフター・ヤン』だ。本作は、「テクノ」と呼ばれる人型AIが普及した世界を舞台にしたSF作品。茶葉の販売店を営むジェイクは、妻と中国系の養女ミカ、テクノのヤンとともに暮らしていた。しかしヤンが突然、故障する。ヤンは単なるAIなのか、それとも家族の一員なのか。 本作を手がけたのは、『コロンバス』やドラマ『Pachinko パチンコ』も評価の高い映画監督のコゴナダ。韓国で生まれ、幼少期にアメリカに家族と引っ越し、長い人生をアメリカで過ごした韓国系アメリカ人だ。それも関係してか、作品内には中国茶やラーメン、コチュジャン、さらには日本映画『リリイ・シュシュのすべて』(200