駅に着く直前、眼前のシートからアラーム音が鳴った。 油を含んだ髪の、少しふくよかな女性が眠り込んでいて、音は彼女の方から鳴っている。その他大勢の人間がそうであるように、彼女も次の大きな駅で降りる予定なのだろうか。しかし、彼女は項垂れた頭を上げる気配を一向に見せない。よほど疲れているのだろうか。 周囲の視線が控えめに彼女に向けられる。砂山に放り込まれた磁石みたいに、彼女は私たちを釘付けにしている。 目的駅はもうすぐだ。 私はごくりと唾を飲んだ。 よく見ると、女はイヤフォンをしている。きっとそのスマホで音楽でも聴いていたのだろう。でも今は、アラーム音がイヤフォンを通さずに直接鳴っている。きっと彼女の耳にはアラームがかすみがかって聞こえているか、あるいは聞こえていないのだろう。 乗り合わせたギャルは思った。 わかる。あるよねこういうパターン。 イヤフォンを通して聴いていた音楽が突然止まり、おいお