書籍『イノベーターズ』(ウォルター・アイザックソン著)の書影。上下巻構成で、現代のコンピューター史を描き出す 撮影:三ツ村崇志 本書『イノベーターズ』は映画化もされた伝記『スティーブ・ジョブズ』などで有名なベテランの伝記作家による、ベストなタイミングでまとめられた「コンピューター史」だ。 原著は2014年、折しも、ディープラーニング(AI開発で注目される「深層学習」)が広く知られ始め、普通の人々が注目するまさに「直前」に上梓された。だからこそ貴重であり、さまざまな見識に富んでいる。翻訳するのが非常に大変だったことが伺える。 実際、あとがきを見る限り、かなりの挫折を乗り越えて翻訳されたようだ。 個人的には人類初のマイクロプロセッサーの設計に多大な貢献をした日本人、嶋正利への言及は欲しかった。が、これは私が日本人だからこそ感じる小さな苛立ちに過ぎないだろう。 興味深いのは、本書の主役がオーガス