『ゲンロン6』をお送りする。今号の特集は「ロシア現代思想I」である。次号とあわせ、2号連続で現代ロシアの思想状況を紹介する。 『ゲンロン』が日本語以外の言論を中心的に扱うのは、これがはじめてである。特集の監修者には、ロシア文学研究者で、東京大学准教授の乗松亨平氏をお迎えした。『ゲンロン』が編集部の外部から監修者を迎えるのも、これがはじめてである。 ぼくはもともとロシアが好きだった。高校時代はドストエフスキーとソルジェニーツィンを愛読し、タルコフスキーの映画を好んで見ていた。大学入学時には第2外国語として迷わずロシア語を選んだ。修士論文ではデリダと並べてバフチンを読んだ。けれども、ロシア文学専攻でも地域研究の専門家でもないぼくにとって、ロシアへの関心が活かせる機会はそのあとほとんど存在せず、ロシア語の知識もすっかり錆びついてしまった。いまでは、ロシア語はまったく読めないし、話せない。弊社では