樹々が伝えてくれるもの。 なんでこんな重要なことを今まで誰も教えてくれなかったのか、と初めて東京に来たときにわたしは思った。 二十年以上前、東京に住んでいた友達が連れて行ってくれた表参道だった。どこかお店にも入ったと思うが、ケヤキのことしかわたしは覚えていない。あんなに太くまっすぐに伸びる幹をわたしは見たことがなかったし、空を覆うように広がる枝も、森の奥深くみたいな密度で茂った葉も、あまりに圧倒的だった。 そんな立派な巨樹が、道に生えているということが、なによりの驚きだった。人も車も行き交う、街の真ん中の、道端に。それまでわたしは、大きな木を見るには郊外まで行かなければならないと思っていた。それか、街を代表する大きな公園とか、長い歴史のある神社やお寺とか、区切られた場所で特別に扱われているものしかないと思っていた。 それが、歩道に生えていたのだった。川の流れに似た緩やかな坂道のずっと先まで