作者: 伊吹羊迷 ウェブサイト: バス来てますよ 文字数: 976 ☆優勝作品 モップは犬である。横山家で飼われているプーリーである。 モップは自分の名前が、掃除用具に姿が似ているところから来たということを知っている。しかしそれを不快に思ったことは無い。横山家の人々は彼を呼ぶ時、きちんと「モ」にアクセントを置いてくれるからである。我ながらよく似ているものだとも思っている。 もちろん、彼のその掃除用具然とした体毛は飾りではない。ただ家の中を歩くだけで、いつの間にか腹の下がホコリと髪の毛だらけになる。横山家の人々はそれを喜んだ。彼の毛に絡まったゴミを捨てるだけで掃除が終わるからだ。モップがわざと廊下の端の方を歩いたり、部屋の隅で腹ばいになるのはこのためである。 横山家には高校生の姉と中学生の弟がいた。散歩には大体この二人が連れて行ってくれた。姉の方はなるべく散歩を早く終わらせようとするから少し