12月25日、九州の、心底野球を愛する人々にはたまらないクリスマスプレゼントだった。かつて西鉄ライオンズでエースを張っていた池永正明氏が、31年ぶりにマウンドに立ったのだ。スポーツ新聞等でかなり大きく報じられていたから、ご存知の方も多いだろう。 もちろん僕は、彼の現役時代を知らない。それでも、寝物語に「一番高倉、二番豊田、三番中西、四番大下、五番関口…」と子どもの耳に全盛期西鉄のラインナップを語るほど、心底ライオンズを愛する父親に育てられた九州生まれの野球ファンとして、感に堪えなかった。泣きそうになった。 ビッグイベントの2週間ほど前、僕は九州の佐賀で仕事をしていた。口数の少ない、いかにも佐賀育ちの男といった感じの実直なタクシーの運転手さんが、池永再登板の話になると突然饒舌になった。「25日ですよね。楽しみですね。」「いまから見に行けるでしょうか?」「いや、もうあの日はドームはいっぱいら