芸術は-自由で「無私」の活動であるがゆえに-人権を侵害してもいいのだろうか? もちろん、いいわけはない。芸術に許されている法律上の「自由」とは、それ自体が基本的人権の範囲を超えることはありえない。だから表現の自由は、原則的にはそれが他人の生存を脅かさない限りにおいてのみ認められる。法的な議論においてもその表現が「美的」「芸術的」であるかどうかがまったく勘案されないわけではないが、何を「美的」「芸術的」と考えるかは人によって意見が異なるので、多くの人が認め既に社会的通念となっている美や芸術の概念に依拠せざるをえない。 けれどもそうした概念は、新たな美や表現の可能性を生み出すべく格闘しているアーティストにとっては、しばしば通俗的で形骸化したものに見える。そんな形だけのものではなく、自分たちの求めているものこそ本当の美であり芸術であると、アーティストや彼らを支持する人々は主張したいのである。この