ウェアラブル機器や健康管理アプリが普及したことで、身体記録の測定による自己管理と自己改善が容易になった。いずれも心身の健康を維持するために始めたことであろうが、それ自体が絶対にこなすべき作業と化すことで、健康になるどころかストレスをさらに高める要因になっていると、筆者は警鐘を鳴らす。 米国では、自己改善は目新しいものではない。 1960年代には瞑想やエッセンシャルオイルが、1980年代にはジェーン・フォンダのエアロビクス・ビデオが流行し、1990年代には無脂肪食品ブームが起こった。ラルフ・ウォルドー・エマソンが「自分の心に平安をもたらせるのは、自分しかいない」と述べたのは1841年のことだが、現代のソウルサイクル(室内サイクリング・スタジオ)のインストラクターが言いそうな言葉にも思える。 こうした昔からのルーツがあって、自己改善産業は110億ドル規模に成長した。 現在の我々を取り巻く多くの