「笈田ヨシ(おいだ・よし)」という名を聞いたことがあるだろうか。舞台が好きな人なら、笈田をもちろん知っているはず。8月、日本で4度目の公演があった『春琴 Shun-kin』(深津絵里主演)の年老いた佐助役の俳優だ(オフィシャルサイトはこちら)。 笈田の名にピンとこない人も、映画『最後の忠臣蔵(音が出ます)』の可音(桜庭ななみ)の嫁ぎ先のあるじ、茶屋四郎次郎を演じた初老の男性と言えば「ああ、あの人!」と思うかもしれない。(文中敬称略) 日本を離れ45年、演出の巨匠ピーター・ブルックも厚い信頼を置く 笈田ヨシ(おいだ・よし) 1933年生まれ。著書『俳優漂流』は価値ある1冊。1968年のピーター・ブルックとの出会い、1970年秋~1973年秋に笈田も参加した演劇団体「国際演劇研究センター(CIRT)」の世界公演旅行、その間に数度日本に一時帰国した時の様子をこまやかに描いている。本書は17カ国語