哲学者ウィトゲンシュタインには実は《ストンボロウ邸》という建築作品が存在する。 姉のマルガレーテ・ストンボロウ=ウィトゲンシュタイン(彼女はクリムトのモデルの一人でもある)とその夫のための邸宅であり、1926年の11月13日付けの建築プランにはウィトゲンシュタイン自身のサインがある。建築を担当した代表者はアドルフ・ロースの弟子の一人パウル・エンゲルマンだが、彼はこの建物のプラン自体はウィトゲンシュタインの発案であることを認めている。東大大学院教授の田中純氏は『建築のエロティシズム』の中で、この建築物における実に奇妙な「接続詞」に注目している。空間における「接続詞」とはすなわち、「窓・ドア」を指している。この建物自体は全体的に無装飾であり、ドアは全面ガラス張りになっている。 ウィトゲンシュタイン《ストンボロウ邸》 ウィトゲンシュタイン《ストンボロウ邸》 田中氏は前掲書の中で、リオタールがその