エキスがしたたるほど新鮮なマツタケがあふれ、むせるような香気に包まれた村は、崖っぷちの未舗装路の急斜面を進んだ、山のまた先の先にありました。 標高3千メートルのマツタケ山から報告します。 ◇ その山にはマツタケがニョキニョキと生え、香気でむせかえっているらしい。しかも山盛り1杯数百円で取引されている――。ヒマラヤの小国ブータンに、そんなおとぎ話のような村があると聞いた。 ならば行くしかないだろう。幸せの国に飛び、桃源郷を探す旅が始まった。 首都ティンプーから約50分、車は幹線道路をそれた。未舗装の山道は、ブータン一のマツタケ産地といわれる村に通じているはずだ。 想像を上回る勾配だった。フロントガラス一面に群青の空がうつり、四輪駆動車のタイヤがズズッとすべる。幾重にも連なる山の奥深くへ。 激しく体を揺さぶられながら約40分、首都から約600メートル高度を上げ、標高はすでに2900メートル。頭