特集ワイド：森下洋子75歳、平和を舞う バレエとは生きること 戦乱の世に舞台から | 毎日新聞

日本のバレエ界を長きにわたりけん引してきたバレリーナの森下洋子さん（75）は、舞踊歴72年目を迎えてもなお一線の舞台に立ち続ける。「東洋の真珠」と絶賛されたその正確な技術と表現力は健在だ。被爆地・広島で生まれ育った森下さんの舞を支えるのは「平和への強い祈りや願いをこめて舞い、素晴らしい舞台をお届けしたい」という思いである。 ゴールデンウイークの公演を前にした4月中旬、松山バレエ団の稽古（けいこ）場（東京都港区）に到着すると「きょうはありがとうございます」と森下さんが丁重に迎えてくれた。身長150センチの小柄な立ち姿は美しく、りんとしている。主役を張るバレリーナは、たたずまいからして違うと感じさせられる。 2021年に舞踊歴70周年を迎え、昨秋には「平和と美の使者として 森下洋子自伝」を出版した。息をつく間もないほど忙しいはずだが、疲れは見て取れない。同年代の人たちはセカンドライフを楽しむ人