異世界大陸軍戦記－鷲と女王－ - プロローグ 青灰色のおチビちゃん （表紙絵付）

「万歳！ フランス万歳！ ボナパルト将軍万歳！」 1798年、南フランスのトゥーロン港は興奮し、歓喜の声を上げる数千人の人々で埋め尽くされていた。視線の先にあるのは百隻を超える無数の軍艦。大波が来ればひっくり返りそうな小舟から、海の上にそびえたつ城のような迫力を持った巨艦までが揃っている。 大通りの石だたみを整列し、銃を担いだ兵士たちが行進していく。誇らしげな勇ましいラッパと太鼓の音色が人々の励ましの声と合わさり、頭上からは花びらが投げ込まれて兵士たちを祝福した。青・白・赤の三色旗がいたるところで振られる。 「おじさん、みんな何を喜んでるの？」 興奮する人々の中、見ようによれば男とも、女とも見える顔つきをした、子供のような背丈の人物が尋ねた。 「やあ。おチビちゃん。ボナパルト将軍がイギリスを倒しに出発するんだよ」 声をかけられた男は酔っ払っているらしく、顔が赤らんでいた。 「ボナパルト将軍