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お父さんの娘 | 空想ラボラトリー | IHI
電話がかかってきたのは、ばんごはんも終わって、ぼくが自分の部屋に戻ろうとしていたときだった。お父... 電話がかかってきたのは、ばんごはんも終わって、ぼくが自分の部屋に戻ろうとしていたときだった。お父さんの電話はジリンジリンととても大きな音がする。昔の電話のベルの音らしい。ベルもないのにベルの音がするのが面白いからそうしているんだってお父さんは言うのだけれど、ちょっと意味がわからない。ベルじゃないものからベルの音がするのはやっぱり変だと思う。 「逃げ出した?」 お父さんは電話口に向けて突然叫んだ。ぼくらの方を振り返り、背中を丸めて口元に電話を抱え込む。声を小さくしているけれど、ひそひそ話はかえって聞こえてしまうものだったりする。お母さんはぼくの肩をつかんで、部屋へ戻っていなさいと言うけれど、ぼくは強く足を踏んばる。 「逃げたって、いったい、どういうことだ」 ふん、ふん、とお父さんは電話と一緒に頷いている。 「一号なんだな」 と電話の向こうへ聞いている。また、ふん、ふん、と繰り返してから