動き出すサウダージ・ブックス ―― サウダージ・ブックスという名前が印象的です。 淺野ありがとうございます。「サウダージ」というブラジル・ポルトガル語は、英語で言う「ノスタルジー」という言葉に一番近いんですけれども、それは半分の意味しか捉えられていないんです。確かに失ったものに対する懐かしさ、やるせなさとか痛みとか、もしくは子供時代をめぐる甘美の記憶への懐かしさなどをさします。 実はもうひとつ、まだ起こっていない未来へのあこがれとか期待みたいなニュアンスも同居しているんです。時間の軸で言えば正反対の方向にぐーっとひっぱられるようななんとも言えない、「遠さ」や「はるかなもの」をめぐる独特の感情をサウダージって言うんですね。 さっきヘソの緒という言い方をしましたが、要は本のある世界に生きる自分のサウダージが宿る場所は、いまはそこから遠く離れてしまったあの「本のない世界」なんだぞ、というひそか