夫婦の姓をめぐる話は小さな問題ではない。家族観や社会秩序の問題だからだ。同姓と別姓を選べるようにする「選択的夫婦別姓制」の主張がある。別姓にしたい夫婦がするのだから、誰にも迷惑をかけないとされる。 世論調査で夫婦別姓に賛成する人のほとんどは、「自分は同姓にするが、希望者に認めてもよい」とする寛容な人たちだ。だが、選択的夫婦別姓制の導入は、それほど簡単なことではない。 夫婦の姓は、戸籍制度と一体のものだ。結婚すると親の戸籍を除籍され、夫婦で新しい戸籍を編製する。子が生まれれば、その戸籍に記載される。この戸籍に記載された人たちが共通の姓を称する。「一戸籍一氏(姓)制」だ。 別姓にすると、1つの戸籍に2つの姓が存在し、家族共通の姓はなくなる。親子で姓も異なる。ファミリーネームが存在しなくなり、氏名は純粋な個人名となる。氏名の法的性格が変わるのだ。これは同姓家族にも及ぶ。制度上は、国民全員からファ