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  • 川名晋史『在日米軍基地』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    5月3 川名晋史『在日米軍基地』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 副題は「米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史」。この副題が書のポイントになります。 日にある米軍基地は1952年に締結された日米安全保障条約を根拠にして使用されています。これにそれこそ中学や高校でも習うことですが、それに対して書は実はもう1つの根拠があるのだと指摘します。 それが朝鮮戦争のときに結成された「国連軍」の基地としての役割で、実際にその後方司令部は横田にあり、国連軍後方基地として横田・座間・横須賀・佐世保・嘉手納・普天間・ホワイトビーチの7ヶ所が指定されています。 あくまでもこれは形式的なものだろうとも思いますが、書を読むと、国連軍基地であることはアメリカにとっては都合が良く、それを密かに維持してこようとした歴史が見えてきます。 日における米軍は日米地位協定のおかげでNATO国内の基地などより

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    haruhiwai18 2024/05/08
    "吉田・アチソン交換公文の親条約(本条約)が日米安保条約ではなくサンフランシスコ平和条約であるという点です。万が一、日米安保条約が解消されても、国連軍は日本に駐留し続ける可能性があると" →ブクマ。
  • 田原史起『中国農村の現在』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月10 田原史起『中国農村の現在』(中公新書) 9点 カテゴリ:社会9点 中国農村へのフィールドワークによって中国農村の姿を明らかにしようとした。非常に貴重な記録で抜群に面白いです。 中国の農村と都市の格差については、NHKスペシャルなどで熱心に農民工の問題をとり上げていたので知っている人も多いと思います。彼らが村に帰ると、そこは都市部に比べて圧倒的に貧しく、お金を稼げそうな仕事もないわけですが、そうした中で農民たちの不満は爆発しないのか? と思った人もいるのではないでしょうか。 また、中国の農村は日の農村のような地縁による強固な共同体ではなく非常に流動性が高いといった説明がなされますが、「農村」という言葉を日の農村でイメージする私たちにとって、なかなか流動性の高い農村というイメージはつかみにくいと思います。 こうしたさまざまな疑問に答えてくれるのが書です。詳しくはこのあと書いて

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    haruhiwai18 2024/04/11
    "出稼ぎによって農民たちは豊かな都市の暮らしも見てくるわけですが、農民の「公平さ」の感覚は都市と農村ではなく農村内部ではたらいており、都市に住む人々と自分たちを比べても意味がないという傾向が" →ブクマ
  • 児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書) : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月21 児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書) カテゴリ:社会8点 相模原障害者施設殺傷事件、京都ALS嘱託殺人事件、そして映画『PLAN 75』など、日でもたびたび安楽死が話題になることがあります。 安楽死については当然ながら賛成派と反対派がいますが、賛成派の1つの論拠としてあるのは「海外ではすでに行われている」ということでしょう。 著者は以前からこの安楽死問題について情報を発信してきた人物ですが、著者が情報発信を始めた2007年頃において、安楽死が合法化されていたのは、米オレゴン州、ベルギー、オランダの3か所、それとスイスが自殺幇助を認めていました。 それが、ルクセンブルク、コロンビア、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア(一部を除く)、スペイン、ポルトガルに広がり、米国でもさまざまな州に広がっています。 では、そういった国で実際に何が起こっているのか?

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    haruhiwai18 2023/12/27
    "カナダでは、医療や福祉を十分に受けられない人の安楽死の申請が医師らによって承認されるケースが報道されており…難病に加えて家賃の高騰で住む場所がなくなった女性などが安楽死しています" →ディストピア
  • 佐藤雄基『御成敗式目』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月30 佐藤雄基『御成敗式目』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 帯には「日歴史上「最も有名な法」の知られざる実像」とあります。御成敗式目が「最も有名」かどうかはわかりませんが、中学校の歴史にも登場する有名な法であることは間違いないです。 一方、聖徳太子によるものとされる「憲法十七条」の内容を多くの人が知っているに対して、御成敗式目の内容を「知っている」と言える人は少ないかもしれません。高校の日史でも御成敗式目を使った史料問題はあまり見たことがないです。 書は、このように知名度の割に中身が知られていない御成敗式目について、その誕生の経緯、性格、内容、後世への影響や御成敗式目の語られ方をまとめたものになります。 ありそうでなかったであり(御成敗式目の英訳はあるが、日語の現代語訳はなく、内容に踏み込んで解説した一般書は山七平『日的革命の哲学』くらいしかないとのこと)

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    haruhiwai18 2023/10/19
    "幕府の下文を持ちながら実効支配しないまま一定期間を起こすことが問題となっていたために置かれた""ところが のちの世になると 20年の実効支配で権利が生じるという一般原則を定めたものとして…引用され" →ブクマ
  • 関口正司『J・S・ミル』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月8 関口正司『J・S・ミル』(中公新書) 7点 カテゴリ:思想・心理7点 ジョン・スチュアート・ミルは日でもよく知られた思想家でしょう。彼が『自由論』で展開した「他者危害の原理」は未だに現役ですし、「太った豚より痩せたソクラテス」といった言葉や、彼が父親から英才教育を受けていたことなどを高校や大学で教わったという人も多いと思います。 書はそんなミルの比較的オーソドックスな評伝です。何かミルについて新しい解釈を打ち出しているわけではありませんし、今までにはなかった切り口で論じたというものでもありません。 内容としては、ミルの人生を追いながら、『自由論』、『代議制統治論』、『功利主義』という3つの主著を解説したものになります。 ただし、それでも今に通じる興味深い考えが数多く出てくるというのがはミルの魅力でしょうし、そうしたミルの面白さを多面的に引き出しているのが著者の腕ということになる

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    haruhiwai18 2023/08/28
    "自由原理について文明社会のどの成人にも適用されると述べていますが、逆に未成年者や未開社会の人々には適用されません""また、投票を私的な権利だと考えさせないために秘密投票制に反対しています" →ブクマ。
  • 保坂三四郎『諜報国家ロシア』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月26 保坂三四郎『諜報国家ロシア』(中公新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 面白いけど、読んでいくとロシアに関係する人がすべて信じられなくなってしまいそうな厄介なでもあります。  プーチンがKGB(国家保安委員会)出身であり、ロシアの前身であるソ連がさまざまなスパイ活動を行っていたことはよく知られていることですが、書を読むと、ロシアが単なるスパイ大国というだけではなく、巨大な情報期間が国家のあらゆる部分に浸透している「防諜国家」であることがわかります。 書はソ連の秘密警察の歴史から説き起こし、情報機関という枠には収まらないソ連・ロシアの諜報機関の姿とそのさまざまな手口、さらに情報機関が国の中心に存在するロシアに広がる世界観を明らかにしています。 そして、こうした世界観と国家体質がウクライナへの侵攻をもたらしたことを明らかにするのです。 目次は以下の通り。第1章 歴史・組織・要

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    haruhiwai18 2023/07/27
    "カーディフ大学の研究チームによると 「Yahoo!ニュース」のコメント欄……でもロシアからの書き込みが行われ""今回のウクライナ侵攻における「失敗」などにも触れてあると…副作用への解毒剤になったのでは" →ブクマ
  • 山形辰史『入門 開発経済学』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月27 山形辰史『入門 開発経済学』(中公新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 開発経済学というと、2019年のノーベル経済学賞をアビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ、マイケル・クレーマーが受賞したこともあり、RCT(ランダム化比較試験)などの新しい手法を使った成果に注目が集まっています。 書はそうした状況に一石を投じるもので、帯に「理不尽な悲惨な状況に立ち向かうために」とあるように、最新の手法の紹介ではなく、現実の悲惨な状況から出発することに重点を置き、開発経済学で蓄積されてきた知見と、実践を紹介しています。 SDGsへの批判的な眼差しや、国益中心に移行しつつあるODAに対する違和感など読みどころも多いですが、構成としては現実と理論の対応がややわかりにくい部分もあると感じました。 目次は以下の通り。第1章 開発経済学の始まりと終わり?第2章 二一世紀の貧困―開発の成果と課題

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    haruhiwai18 2023/05/09
    "「ヒモ付き」援助が中心でしたが、批判を受けてアンタイド化が進んで""しかし、2017年の状況を見るとアンタイドとされているものの約70%を日本企業が受注しており、「透明なヒモ」があるのではないかとも" →ブクマ
  • 藪田貫『大塩平八郎の乱』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月8 藪田貫『大塩平八郎の乱』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 大塩平八郎の乱の名前は中学の歴史の教科書にも載っているので多くの人が知っていると思います。大坂奉行所の元与力が起こした反乱は、泰平の世、そして幕藩体制を揺るがす先駆けとなった出来事として位置づけられています。 ただし、乱自体は一日で鎮圧されているものの、大塩は大筒を持ち出して大坂の町に大規模な火災を起こしており、蔵書を売って貧民救済をはかろうとした聖人的な部分と、蜂起に踏み切って行ったことの間に乖離を感じるのも事実です。 書はそういった乖離を大塩という人物を史料によって再構成しながら埋めていきます。特に大塩が乱後も一月近く潜伏していたのはなぜなのか? という疑問については書を読んで納得しましたし、大塩の人物像も随分とクリアーになります。 新しい史料の発見とそこで明らかになった大塩像を合わせて説明しており、歴史

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    haruhiwai18 2023/02/16
    "このあたりが大塩の目論見が外れた理由にもなります。檄文では貧民層に蜂起への参加を呼びかけていますが、大量の貧民が乱に合流することはありませんでした。奉行所の救貧政策がそれなりに機能していた" →ブクマ
  • 佐々木雄一『近代日本外交史』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月17 佐々木雄一『近代日外交史』(中公新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 ペリー来航から太平洋戦争が終わるまでの近代日外交史の歩みをたどったもの。著者は以前に同じ中公新書から『陸奥宗光』を出していますが、それとはまたガラッとスタイルが違います。 「あとがき」にも書いてあるように、『陸奥宗光』はぎっしりと情報の詰まったで、「その感じで「近代日外交史」をやったら500ページあっても足りないのでは?」と現物を見る前は思っていましたが、書は文で215ページほどとコンパクトな形になっています。 そのため、個々の出来事についてはそれほど深く追求せず、外務省を中心とした日の外交の流れがわかるような形でまとめられています。 ただ、それでも読んでいいくと著者のこだわりが感じられる部分も多く、複数の著者による教科書的なものとは違う一貫した視座もあります。 さらに巻末には詳細な文献案内も

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    haruhiwai18 2023/02/01
    "日本が満州に持っているのは鉄道に付属する利権などであり、「生命線」という割にはその支配の根拠は脆弱""蒋介石の北伐や帝国主義的外交への批判もあって、これらの権益も維持するのが困難な状況に" →ブクマ。
  • 橋場弦『古代ギリシアの民主政』(岩波新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月27 橋場弦『古代ギリシアの民主政』(岩波新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 古代ギリシア民主政研究の日における第一人者ともいうべき著者による。一般的な古代ギリシア民主政へのイメージを覆す刺激的なになっています。 古代ギリシアの民主政はアテナイを中心に行われ、そのアテナイの民主政はサラミスの海戦での勝利を経てペリクレスのもとで絶頂を迎えるが、次第に衆愚政に陥ってペロポネソス戦争でスパルタに敗北してしまう。古代ギリシアの民生政というとこんなイメージを持っている人も多いと思いますが、著者によれば、民主政はその後のアテナイで復活して成熟を迎え、アテナイ以外のポリスにも広がっていったといいます。 さらに書では考古学的な発見などを用い、当時にアテナイの社会の状況の復元を試み、プラトンやトゥキュディデスのが伝えるものとは違った、そして現代の民主主義とも違う古代ギリシアの民主政の姿を

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    haruhiwai18 2022/10/28
    "アテナイの民主政は…多くの市民は働きつつ、民会などにも参加""誰しもが支配者になることを経験するのがアテナイの民主政の本質""区民会や区役人の経験が市民を鍛えたのです。" →ブクマ。
  • 安達宏昭『大東亜共栄圏』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月23 安達宏昭『大東亜共栄圏』(中公新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 「大東亜共栄圏」というと、日が太平洋戦争の目的として持ち出してきたスローガンというイメージが強いかもしれませんが、同時に大東亜共栄圏は経済圏の構想でもありました。 書では、この経済圏としての大東亜共栄圏に焦点を合わせながら、それがいかに構想され、挫折したのかということを見ていきます。総力戦を戦うために、日はアジアに資源を求めましたが、なんとか辻褄が合ったはずの机上の計画は現実には上手くいかなかったのです。 また、この大東亜共栄圏の軌跡を通じて、アジアの各地域の指導者たちのしたたかさや、日の統治機構の問題点などが見えてくるのも書の面白いところです。 目次は以下の通り。序章 総力戦と帝国日―貧弱な資源と経済力のなかで第1章 構想までの道程―アジア・太平洋戦争開戦まで第2章 大東亜建設審議会―自給圏構想の

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    haruhiwai18 2022/09/30
    "軍部も占領地での重要資源の確保を優先していましたが、占領地から物資を日本に送れば現地の物資が不足する恐れも""これについては我慢させ日本軍への信頼を助長するという両立困難な方針が" →最初から無理ゲー
  • 齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月24 齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』(中公新書) 8点 カテゴリ:思想・心理8点 20世紀において政治哲学を復興させたと言ってもいいジョン・ロールズの評伝。 1971年に出版された『正義論』は大きなインパクトを与え、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュタリアニズムといった政治思想の区分が生まれるきっかけを与えました。『正義論』そのものは読んでいなくても、その議論や『正義論』に対する批判のロジックを知っている人は多いはずです(自分もそう)。  しかし、時系列に沿いながらロールズの思想を解説する書を読んで、実は意外と知らなかったことが多かったことにも気付かされました。 若い頃にウィトゲンシュタインの影響を色濃く受けていたこと、『正義論』へ寄せられた批判の中では、ノージックでもサンデルでもなく、H・L・A・ハートからの批判がもっとも重要だったこと、晩年に京都賞を辞退していたことと

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    haruhiwai18 2022/05/17
    "京都賞の辞退です。90年第後半に京都賞を打診されたロールズはこれを断っています。この理由は1990 2003年まで京都賞の受賞者には天皇・皇后に拝謁する機会が設けられていたからだと思われます。" →ブクマ
  • 小口彦太『中国法』(集英社新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月26 小口彦太『中国法』(集英社新書) 8点 カテゴリ:社会8点 副題は「「依法治国」の公法と私法」。長年、中国の契約法を中心に研究してきた著者が、中国における具体的な判例に沿いつつ、中国の法の特質を論じたになります。 判例を中心に法学的な議論がなされているので決してとっつきやすいではないのですが、読み進めていくと中国の法、そして政治や社会の原理といったものまでが見えてきて非常に面白いです。 さらに、中国の法制度は欧米流の刑事司法の原則や法の支配、あるいは立憲主義といった考えからは明らかずれている部分があるのですが、その「ずれ」は、実は一般的な日人にとって比較的受け入れやすい考えでもあり、欧米で発展してきた司法制度そのものがかなり特異なもの(だからこそ貴重)だということが見えてくるような内容になっています。  目次は以下の通り。 序章 私法か公法か、法律認識のギャップがもたらした

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    haruhiwai18 2021/01/28
    "こうした考えは、宋代の民事訴訟にはあまり見られず、清代になってから定着したものとのことですが、それでも中国の訴訟においてある種の伝統として機能していると言えそうです。" →「教諭的調停」
  • 鈴木亘『社会保障と財政の危機』(PHP新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月5 鈴木亘『社会保障と財政の危機』(PHP新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 経済学者で、社会保障を専門とする著者が、コロナ危機で露呈した日の社会保障の問題点と、危機の中でこそ行う改革を論じた。タイトルからすると、財政危機への警鐘をメインにしたにも思えますが、「消費財減税は可能」と主張するなど、「財政再建をしないと大変なことになる」と主張するではありません。危機における財政出動は当然のものとして認めつつ、膨張する社会保障費をいかに効率化していくべきかを考えています(実は著者には『財政危機と社会保障』(講談社現代新書)という2010年に出版されたよく似たタイトルの新書があるのですが、このときはもっと「財政危機」が強調されていたと思う)。 著者は、経済学者として経済学の観点から乱暴とも思える議論をするときと、現場を知る人間として実際の現場での経験をもとに政策を組み上げていくとい

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    haruhiwai18 2021/01/08
    "『年金は本当にもらえるのか?』…などで主張されていた積立方式への移行は引っ込められましたね。やはり現実の社会保障制度を大きく動かすのは大変なのだと思います" →今更感もあるが(やっと引っ込めたか)。
  • 澤田晃宏『ルポ 技能実習生』(ちくま新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月20 澤田晃宏『ルポ 技能実習生』(ちくま新書) 8点 カテゴリ:社会8点 過去に技能実習生をとり上げた優れたルポというと、安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)が思い出されますが、同書が出たのが2010年。あれから10年経っているわけです。 技能実習生制度に関しては多少改善がはかられているものの、失踪者が絶えないなど、相変わらずさまざまな問題が報じられています。それにもかかわらず技能実習生の数は増え続けています。その原因の最大のものは日における労働力不足というプル要因ですが、書はプッシュ要因にも注目しています。この10年で実習生の送り出し国のトップは中国からベトナムに変わりましたが、著者はそのベトナムで取材することによって日を目指す若者が絶えない要因を明らかにしています。 そして同時に、制度のはらむ問題や、実際にトラブルに見舞われた実習生、「ひどい」としか言い

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    haruhiwai18 2020/08/20
    "元実習生の送り出し機関の幹部は、著者の取材に「日本人は真面目で誠実な人が多いと思っていて、実際そうだった。だけど、送り出し機関に関わるようになって、こんなクソみたいな日本人がいるのかと" →いる。
  • 渡辺靖『白人ナショナリズム』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月22 渡辺靖『白人ナショナリズム』(中公新書) 7点 カテゴリ:社会7点 2020年5月25日、ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイド氏が警察官に首を圧迫され死に至ったことから各地でデモや暴動が起きました。警察官の黒人に対する差別的な取り扱いは過去にも繰り返されてきたことではありますが、今回、ここまで怒りが高まった背景としてはトランプ大統領が積極的な「火消し」に動かなかったという面もあるでしょう。そして、そのトランプ大統領の姿勢の背後にあると見られるのが書がテーマとする「白人ナショナリズム」です。 書は、そんな「白人ナショナリズム」の実態を、当事者へのインタビューなどを通じて解き明かそうとしています。著者は長年アメリカについて研究を重ねてきた社会人類学の学者であり、センセーショナルにならずにその実態を描いていきます。 古くはKKK、あるいは映画アメリカン・ヒストリーX』で描かれてい

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    haruhiwai18 2020/06/24
    "女性の活動家もいて 白人ナショナリストの男性とカップルになるケースもあります。ところが、「周囲を見渡せば、女性が懸命に稼ぎ、男性はインターネットに興じるといったカップルがほとんど" →ろくなもんじゃねえ
  • 永吉希久子『移民と日本社会』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月23 永吉希久子『移民と日社会』(中公新書) 9点 カテゴリ:社会9点 先月刊行された友原章典『移民の経済学』(中公新書)はなかなか面白いでしたが、2ヶ月連続で同じレーベルから同じく移民をテーマとして刊行された書もまた面白い! データをもとにして移民を受け入れたときの経済や社会への影響を分析している点は同じですが、『移民の経済学』が主に海外経済学者による研究を中心に検討しているのに対して、書では「移民と日社会」というタイトルに沿う形で、移民が日社会に与える影響をさまざまな角度から検討しています。 そして、書はこの「さまざまな角度」の充実ぶりが素晴らしいです。大量の先行研究に目を通しており、移民をめぐるさまざまな実態と論点を知ることができます。また、最後に出てくる「移民問題」というわかりやすい看板の下で、社会の質的な問題が隠されているのではないかという視点も良いと思いま

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    haruhiwai18 2020/05/13
    "移民の出生率の高さは、イスラム諸国出身者を除いて世代を経るごとに小さくなり、受入国と変わらない水準になっていく""日本でもフィリピン籍とベトナム籍を除くと出生率は日本人を下回っています" →移民と出生率
  • 益尾知佐子『中国の行動原理』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月23 益尾知佐子『中国の行動原理』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 似たタイトルの中公新書に岡隆司『中国の論理』というがありますが、あちらが中国歴史と思想から中国の行動様式を読み解こうとしたであるのに対して、こちらは副題が「国内潮流が決める国際関係」とあるように、国内の社会のしくみとそれを反映した政治のしくみが、いかに外交に現れているかということ明らかにしようとしたになります。 著者は国際関係論や中国の対外政策の研究者ですが、書ではエマニュエル・トッドの家族類型の分類の枠組みなどを用いながら、かなり思い切った議論を展開しています。そのため、第5章と第6章の事例分析はあるものの(第6章の国家海洋局に関する分析は面白い)、中国の外交を事細かに説明しているわけではありません。ただし、思い切った議論であるぶん、非常に刺激的な内容でもあり、少なくとも「独裁国家としてリア

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    haruhiwai18 2019/12/25
    "国家海洋局は4つの組織に分割され徹底的に解体""2016年の仲裁裁判判決で中国の「九段線」の主張が根本的…否定されたことなどがきっかけで、国家海洋局の動きが問題視され、強烈な引き締めにあった" →栄枯盛衰
  • 松岡亮二『教育格差』(ちくま新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月18 松岡亮二『教育格差』(ちくま新書) 8点 カテゴリ:社会8点 タイトルの通り、日における教育格差を論じた。以下にあげる目次を見るとみると、第2章以降、「幼児教育」、「小学校」、「中学校」、「高校」という章立てになっていますが、書では、どの段階にあっても親の学歴や地域の所得や階層に基づいた格差があることを確認しています。 これがもう粘着的といってもいいほど徹底的で、いかなる段階においても親の学歴が子どもの学力なり生活習慣なり将来設計に影響を与えているということを、何度も何度もデータを使って明らかにしています。 自分は比較的データを読むことに飽きないたちなので問題なく読めましたが、もうちょっと簡潔に書いてくれと思う人もいるかも知れません。しかも、325個の注と21pにわたる参考文献一覧がついており、形式は新書であっても専門書に近い内容になっています。 そういった点で、やや無味乾

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    haruhiwai18 2019/08/06
    "「ゆとり教育」は受験競争や詰め込み教育を批判する形で導入されましたが、1990年代のデータでは中3で毎日2時間以上勉強している生徒は20%に満たなかったといいます。70年代から学習時間は減りつつあり" →現実
  • デイビッド・T・ジョンソン/笹倉香奈訳『アメリカ人のみた日本の死刑』(岩波新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月4 デイビッド・T・ジョンソン/笹倉香奈訳『アメリカ人のみた日の死刑』(岩波新書) 8点 カテゴリ:社会8点 日の刑事裁判制度について研究してきたアメリカ人の社会学者が、死刑反対の立場から日の死刑について論じた。トルストイは『アンナ・カレーニナ』の中で、「幸せな家族はすべて似かよっているが、不幸な家族にはそれぞれの不幸のかたちがある」と述べましたが、このではそれをもじって「すべての廃止国は似かよっているが、死刑のある国はそれぞれ独自の死刑存置の理由がある」(1p)という問題意識のもと、日はなぜ死刑を廃止しないのか、死刑の廃止のためにはどのような道が考えられるかということを分析・検討しています。 外国人、特に自国で死刑が執行されているアメリカ人が日に向けて死刑の廃止を呼びかける内容になっているため、「まずはアメリカで死刑廃止を求めれば良い」と感じる人もいるかもしれませんが、

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    haruhiwai18 2019/08/06
    "アメリカの陪審において死刑判決は12人の全員一致である必要""しかし、日本の裁判員制度では9人中5人が賛成すれば死刑判決を下すことが可能""…死刑廃止国は世論の後押しによって死刑を廃止したわけではない" →重要