生ぬるい風が吹き始めた頃、車高の低い黒塗りのセダンがEvery Little Thingの『スイミー』を爆音で流しながら走り去っていった。わたしにはまるで春の到来を知らせる鐘の音のように聴こえた。 春になると無性に聴きたくなる曲がある。JUDY AND MARYの『散歩道』、ともさかりえの『カプチーノ』、スーパーカーの『lucky』とか。Spotifyでそれらの曲を「春」というプレイリストに組み込んだ。誰に聞かせるでもないのに、あいみょんの『桜が降る夜は』の歌マネを運転中に練習したりしている。 好きな季節ランキングで春は3位だし(最下位は夏)、欲しい硬さのスカルプブラシがピンク色だから購入をためらっているというのに、桜にだけはめっぽう弱い。簡単に心がなびいてしまう。 桜味のチョコレートや桜フレーバーの歯磨き粉はついカゴに入れてしまう。先日、桜の香りの入浴剤をネットで探して注文したくらいだ。