本書は「ヘンゼルとグレーテル」「いばら姫(眠れる森の美女)」といった、あのグリム童話の数々をユング心理学の視点で鮮やかに読み解いていく目から鱗のグリム童話解説です。 河合隼雄先生といえば、面白エッセイストとか対談の名手、あるいは文化庁長官というイメージが強いですが、本書では本業(?)であるユング派分析家としての本領が遺憾なく発揮されています。 ****** ユング心理学の特徴の一つとして「集合的無意識」における「元型」の概念が挙げられます。 「無意識の発見者」と言われるジークムント・フロイトによれば、人の心は意識(前意識)と無意識に分けられるとされます。これに対して、カール・グスタフ・ユングは無意識をさらに「個人的無意識」と「集合的無意識」に分けることを提唱しました。 集合的無意識というのは、ユングによれば個人的体験を超えた人類に共通する先天的な精神力動作用である「元型」によって構成される