長谷川敏彦君は、僕の弟を殺害した男です。 こんな衝撃的な一文から始まる。実の弟(原田明男)を殺害された原田正治が書いたものだ。このあと、文章はこう続く。 「大切な肉親を殺した相手を、なぜ、君付けで呼ぶのですか」 ときどき質問されます。質問する人に僕は、聞き返したい気持ちです。 「では、あなたはどうして呼び捨てにするのですか」 彼が弟を殺したことを知る前から、僕は、彼を君付けで呼んでいました。弟を殺したと知り、彼をどれほど憎んだでしょう。 「あなたは、僕が彼を憎んだほどに、人を憎んだ経験がありますか」 質問者には、こうも聞いてみたいものです。それともこう聞きましょうか。 「あなたは、僕以上に、長谷川君を憎んでいるのですか」 彼を憎む気持ちと、彼を呼び捨てにすることとは違います。長谷川君のしたことを知って、呼び捨てにしてすむ程度の気持ちを抱く人を、僕は羨ましく思います。 (中略) 被害者遺族が