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なぜなら、話を聞いた記者である僕自身がその祖父や母親を直接知っているわけではないし、あくまで孫であり息子のK君を通しての情報しか知らないからだ。たとえK君がこうした生い立ちを話してくれるまでに何度もの取材を要して、それが過去の治りきらぬ傷から出る血膿のような話だったとしてもだ。 誘導的に質問を続ける。同情できる要素などいっさいなさそうなその祖父に、いいところはなかっただろうか? 「あんな汚いジジイにいいところなんかあるはずないですよ」と言うK君に、あらためて記憶を掘り出してもらうと、ずいぶんと考え込んだ後にK君は話し始めた。 「そういえば、中学で初めてアイパーかけたときに、カネ出してくれたのはジジイでしたね。隣町までバスで行かないとアイパーやってる床屋がなくて、バス代もくれました」 ケガをして働くことをやめた祖父 酒を飲んで暴れるということはなかったのだろうか? 「気分屋だったんで、酒飲む
7月中旬、神戸市内の郵便配達員、三田剛さん(55歳、仮名)に会った。期間雇用社員の三田さんの二の腕から先は早くも真っ黒に日焼けしていた。その日焼け具合は正社員となんら変わらない。が、待遇には天と地ほどの違いがある。 たとえば昨秋、全国各地の社員たちが総出でこなした「マイナンバー通知カード」の配達。制度実施に先駆け、通知カードの入った簡易書留を全国約5400万世帯に一斉に配った。究極の個人情報の誤配は絶対に許されない。つねにない緊張感の下、社員らは通常の仕事をこなしながら、仕分けや住所確認などの作業に追われた。 このとき、正社員には年度末に7万~8万円の「奨励手当」が出たが、三田さんら非正規の期間雇用社員はゼロ。あまりの差別に「まったく同じ仕事をしてるのに、なんでやねん」とぼやく。 正社員の新人教育も仕事のうち 実際には「同じ仕事」どころではない。現在、三田さんはこの春に新卒で入社してきた正
たとえば前回の冒頭で「もし食い物万引きしちゃいけないって言うなら、3日間公園の水だけ飲んで暮らしてみればいいんすよ。非行少年なんか、親が3日飯食わせなかったら誰だってなるんすよ」と発言した青年もそうだった。 取材時に25歳だったK君は、まさにかつて子どもの貧困の当事者だった青年だ。母親と父親のなれそめは、母親がキャバクラでバイトをしながら専門学校に通っていたときで、父親は年の離れた元客だった。父の仕事は不動産の営業だったが、バブルの崩壊で父親は借金を抱えて失職し、母親へのDVもあったために離婚。 小学校に上がったばかりだったK君は母親とともに、某県の公営住宅で独り暮らしをしていた母の父親のところに身を寄せたという。 働かず毎日ワンカップを飲んでる祖父 「それで、ジジイが生活保護(受給者)だったんですけど、初めて部屋入ったときの臭いは忘れられない。リアルにうんこ。汚物の臭いで、俺、絶対こんな
「子供のことが心底憎いって思ってる親がいるはずがないって、わたし、生まれてから100回ぐらい他人に言われた。けどわたしが施設で暮らしてる間、母親から“あんた生むんじゃなかった”って手紙も100通ぐらい送られてきた気がする。母親の手紙にカミソリ入ってたことだってある」 「俺はヤクザになりたくないから東京に来たんですよ。中学卒業して地元で食っていきたかったら、ゲソ付ける(ヤクザになる)かヤクザの下で働く以外に選択肢がない地元って、鈴木さんわかります?」 「少なくともウチが通ってた高校じゃ、高校中退した理由が親の失業だって同級生がクラスに8人いました」 「初めての援交の相手はママの元カレです。あたしのママは、ばあちゃんに“シングルマザーでも娘3人生めば家が建つ”って言われて育ったんだって。女は中学卒業すりゃ夜職に突っ込んで稼がせることできるからって。実際、ママは中3からずっと夜職」 「鈴木さんて
異臭漂う28歳の巨漢ロリータ服の援デリ(組織売春)嬢のホークちゃんこと瑠衣さんは、思ったとおりの問題児であった。初回の取材でも「一品ものの老舗ブランド服」と言っていたロリータ服は明らかに縫製が甘い安物だったし、語る言葉からは深く考えるまでもなくバレバレのウソがいっぱいだ。 追加取材のアポイントを取り付けたが、初回取材の翌週にセッティングした待ち合わせ場所に彼女は訪れず、翌日になって「腰痛で死んでたにゃ」とLINEが1本。さらに翌週のアポイントをするも、その直後にLINEのアカウントも変更されて音信不通になり、紹介元の援デリ業者のところからも「瑠衣は飛んだ(失踪した)」と連絡があった。 こうした取材ではあまりにもアルアルの展開で驚きもしないが、そんなこんなで数カ月後に、唐突に僕の携帯のSMSに「瑠衣ですがちょっと相談があるので会えませんか」と単刀直入な連絡が入った。 ようやくここからが、本当
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