最近、MMT(Modern Monetary Theory)という理論がアメリカで話題になっている。かつてはそれをトンデモ経済学として嘲笑していたクルーグマンも、それをまじめに検討している。これは単なるアカデミックな話題ではなく、日本の財政を考える上でも重要である。 MMTの元祖とされるのはアバ・ラーナーで、彼の内国債は将来世代の負担にならないという議論は、今も使われることがある。国内の資源は、国債発行で増えも減りもしない。政府の借金は国債を買った人の資産なので、国債が将来世代に相続されるなら国民全体としてはプラマイゼロだ。 債権=債務なので、これは会計的にはつねに正しいが、自分の意思で国債を買う人は利益を得る一方、強制的に課税される人は不利益をこうむる。所得分配にも大きな変化が生じるが、現在世代にも将来世代にも納税者と債権者がいるので、国民全体としては同じだ。 国債をすべて償還する必要も