怒鳴る、暴れる、治る見込みはない 「『誰だ、お前は。なんで俺の家にいるんだ。出ていけ!』、毎日のようにそう主人から怒鳴られました。『私はあなたの妻です』と必死に訴えても、逆上するばかり。ひどいときは体を押さえつけられて、何度も殴られました。体中が痣だらけになっても、じっと耐え続けてきたんです。 どんなに認知症が悪化しても、すんでのところで元気だったころの主人の笑顔が脳裏をよぎる。そのたびになんとか踏みとどまってきました」 そう語るのは、加藤美幸さん(仮名、78歳)。3年前に夫の清さん(78歳)が認知症になってから、懸命に自宅で介護を続けてきた。 何十年も連れ添った夫婦には、ふたりにしかわからない情や絆がある。それは、簡単に失われるようなものではない。だが、いつ終わるとも知れない介護生活を続けるうちに、愛だけでは耐えられなくなる瞬間が訪れる。 加藤さん夫妻は高校時代の同級生で、幼馴染み。学生