ロシアで14日に始まったサッカー・ワールドカップ(W杯)。開幕戦のあったモスクワのルジニキ競技場ではロシアの三色旗に交じって、赤い国旗をたびたび見かけた。よく見ると旧ソ連の国旗。旧ソ連時代のユニホーム姿のファンも少なくない。どうしてソ連? 尋ねてみると、胸の内には様々な思いがあった。 赤地に白い文字で「CCCP(ソ連の略称)」。古びたユニホームを着ていたのは、イエフゲニ・ボロフさん(59)。「このシャツはもう20年間着ている。昔はソ連チームは強かったんだよ」。自慢げに見せてくれた背中の「23」は、1963年に年間世界最優秀選手に輝いた伝説のGKヤシンの背番号だ。 かつて、ソ連はサッカー強豪国だった。66年にはW杯で4強入り。88年ソウル五輪では、決勝でブラジルを破って優勝。この年、欧州選手権でも準優勝を果たした。「いまの選手たちは高い給料をもらいすぎ。この国は豊かになったけど、大切なことも