◇「教訓」生かされてない--教団幹部の裁判取材を長年続けた直木賞作家、佐木隆三さん 大変な数の被害者を出した組織犯罪で、裁判に時間がかかったのはやむを得ない。法廷で見ていると、松本智津夫死刑囚が傍聴席最前列から手を振る娘を意識していることが分かった。(公判中の意味不明の発言などから)訴訟能力を失っているとの指摘もあるが、私はあったとみている。審理が中途半端に終わったという声も聞くが、多くの幹部の公判でジグソーパズルのように埋まり、真相解明は十分にできた。 新実智光死刑囚らのように、法廷でもかたくなだった幹部がいる中で、林郁夫受刑者が印象的だ。「命を預かる医師なのにサリンを発散した。自分は早く死刑になるべきだ」とよく泣いた。彼の供述で捜査が動いたのは事実で、無期懲役判決に違和感はなかった。 なぜ彼らがあっさり現世を捨て来世に望みを託し、恐ろしい犯罪に走ったのかは今も合点がいかない。首謀者の松