11月11日(金)公開のマーベル映画の最新作を、シェイクスピア研究者でフェミニスト批評家の北村紗衣が読み解く。 *以下、結末までのネタバレを含みます。 王座か、それとも個人としての人生かマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCUと表記)の新作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、2018年に公開された『ブラックパンサー』の続編にあたる。前作同様ライアン・クーグラーが監督をつとめ、メインキャストの多くも再登場している。登場していないのは、前作のタイトルロールであるブラックパンサーことティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)だ。 前作の主人公が出演していないのは、主演のボーズマンが2020年にガンにより亡くなったからだ。カリスマ的な魅力と演技力を兼ね備えたスターであったボーズマンの夭逝は映画界にもファンにも大きな衝撃を与えたが、アフリカ系アメリカ人の観客にとって重要なシリーズ