2021年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。仕事術部門の第4位は――。(初公開日:2021年9月7日) 東京・新橋に「京味」という日本料理店があった。国内外のVIPを常連客としていた伝説の店だが、2019年に逝去した主人・西健一郎は初めて来店する客にも心遣いを欠かさなかったいう。その接客の心得を、ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが書く――。 ※本稿は、野地秩嘉『京味物語』(光文社)の一部を再編集したものです。 当時は珍しい「カウンター割烹」の店 東京に出てきた一九六七年頃でさえ、カウンター割烹かっぽうは今ほど多くはありませんでした。和食を食べると言えば、座敷であり、仲居さんが調理場から料理を運んでくるのが当たり前でした。開店してすぐの頃でした。年配のお客さまがやってきて、カウンターしかないのかと不満そうに言われたことがあります。