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ナショジオの検索結果41 - 80 件 / 153件

  • 大量に噴出する水素ガスを発見、世界を変えるエネルギー源に?

    米ノースカロライナ州沿岸部のLiDAR(光による検知と測距)画像。地中から漏れ出している水素ガスによって、明るく円形に色づいて見える。地中から水素を回収できれば、温室効果ガスを排出せずに発電できるため、水素が大量に蓄えられた場所を探す取り組みが続けられている。(PHOTOGRAPH BY VIACHESLAV ZGONNIK AND MICHAEL DAVIAS) 地質学の実地調査は、噴火する火山の斜面や極寒の南極の谷底など、ときに過酷な場所で行われる。とはいえ、何度も爆発した鉱山の中で調査されることはあまりない。ところが、南欧アルバニアにあるクロム鉄鉱の鉱山で、まさにそれが行われた。科学者たちの目当ては、ほぼ純粋な水素ガス。爆発のもとであると同時に、世界を変えるクリーンなエネルギー源になりうるものだ。 その水素が漏れ出ているところが見つかったと、2024年2月8日付けで学術誌「Scien

      大量に噴出する水素ガスを発見、世界を変えるエネルギー源に?
    • 「パンチドランカー」を生きている間に治療できるように、研究

      2018年6月9日、カリフォルニア州ロサンゼルスで行われたWBCスーパーウェルター級タイトルマッチで、オースティン・トラウト氏(白のトランクス)と対戦するジャーメル・チャーロ氏(ゴールドのトランクス)。この試合は、チャーロ氏が判定勝ちした。(PHOTOGRAPH BY JAYNE KAMIN-ONCEA, GETTY IMAGES) パンチドランカーと患者が言われることもある「慢性外傷性脳症(CTE)」は、記憶障害、認知機能の低下、行動の変化といった症状が、通常は中年期から徐々に進行する神経変性疾患だ。アメリカンフットボール、アイスホッケー、ボクシング、総合格闘技など、接触が多いコンタクトスポーツの選手のほか、軍人や家庭内暴力の被害者など、繰り返し頭部に外傷を受けた場合でも発症する。(参考記事:「爆風の衝撃 見えない傷と闘う兵士」) CTEは現在、死後の解剖によってしか確定診断できないが、

        「パンチドランカー」を生きている間に治療できるように、研究
      • コロナ感染で人格が変わる? 脳研究でわかってきたこと

        フォトジャーナリストのジャラル・シャムサザラン氏は、アルツハイマー病と闘う父の姿を記録した。写真は、母が父に、ここは父自身が若い頃に建てた家なのだと教えているところ。神経科学者らは、新型コロナ後遺症の症状の一部がアルツハイマー病などの神経変性疾患の症状と似ている点に注目している。(PHOTOGRAPH BY JALAL SHAMSAZARAN, NVP IMAGES) 2020年の前半、新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加していた米ニューヨーク市で、尊敬される救急医ローナ・ブリーン氏が自死した。49歳だった彼女は、ニューヨーク長老派アレン病院の医長を務めており、聡明で、精力的で、有能な人物と評価されていた。精神疾患の病歴はなかったが、新型コロナに感染したことで状況は一変した。 ブリーン氏は同年3月18日に発症し、10日間の闘病を経て仕事に復帰した。しかし家族は心配していた。氏が混乱し、

          コロナ感染で人格が変わる? 脳研究でわかってきたこと
        • めまい、混乱、言葉が出ない…コロナは軽症でも認知力低下の恐れ

          提供された脳を保存するための準備をする技術者。臓器サンプルは、新型コロナウイルス感染症、神経変性疾患、老化等が脳に与える影響を研究するために不可欠だ。(PHOTOGRAPH BY LUCA LOCATELLI FOR NATIONAL GEOGRAPHIC) 3日半も熱とせきで寝込んだエレナ・カッツァップさんは、新型コロナウイルス感染症から回復したものだと思っていた。米ロサンゼルスに住む作家で教師の彼女は、2022年1月末に感染したが、幸いにも軽症で済んだ。呼吸困難の症状や入院の必要はなく、数日で回復した。 「『元気になって本当によかった』と口にしたことを覚えています」とカッツァップさんは言う。「その翌日に突然、症状が出たのですが、始まりは吐き気や腹痛、奇妙な物忘れだったので、一体どういうことなのかわかりませんでした」 カッツァップさんはその日以来、集中力の欠如を伴う急性の記憶喪失を経験し

            めまい、混乱、言葉が出ない…コロナは軽症でも認知力低下の恐れ
          • 海に岩をまいて温暖化抑止、進む「海洋アルカリ化」実験

            特大の試験管「メソコズム」の外側に藻類が繁殖して日光を遮らないようにブラシで清掃するスキューバダイバー。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL SSWAT, GEOMAR) ここはアフリカ北西部の沖合にあるスペイン領カナリア諸島、グラン・カナリア島の静かな村。夜明け前の港を科学者のチームが足早に歩いてゆく。目指すは、並んで海に浮かぶ9つの大型試験管「メソコズム」だ。 「急ごう、もうすぐ明るくなる」。目を充血させた研究者が、箱形の重そうな装置を1つのメソコズムの中に沈めた。発光する生物の活動を測定する装置だ。「明るくなってからだと測定値に影響するのです」と説明してくれた。 ウレタン樹脂でできたメソコズムは、8000リットルの海水で満たされ、それぞれに異なる量の石灰岩が混ぜられている。石灰岩は炭酸カルシウムを主成分とする岩で、水に溶かすとアルカリ性になる。 このとき研究チームが取り組んで

              海に岩をまいて温暖化抑止、進む「海洋アルカリ化」実験
            • 適切な専門家に聞く「新型コロナ」の読み解き方

              今年(2020年)になって、にわかに注目され、3月以降、世界的な一大問題になった新型コロナウイルス感染症COVID-19は、いまや日本に住むぼくたちの生活にも大きな影響を及ぼしている。WEBナショジオのような科学系サイトのアクセスランキングを見ても、トップページに表示される1位から5位まですべてが、「コロナ関連」であることも珍しくない。おそらくは、100年後の世界史の教科書に、時代の変化の契機として項目が立つかもしれないと言っても、多くの人が合意するのではないだろうか。 そんな中で、報道の科学的な側面がどれだけ適切なものか懸念を覚えることが多い。おそらく理由の一つは、誰もが関心を持つこのパンデミックとその対策について、専門家に解説を求めようにも、その専門家からして手薄だということに起因する。例えば、テレビの情報番組に専門家枠で登壇するコメンテーターが「実は専門家ではない」問題は、今回につい

                適切な専門家に聞く「新型コロナ」の読み解き方
              • 9人が怪死「ディアトロフ峠事件」の真相を科学的に解明か

                1959年2月26日、ディアトロフ峠で遭難した登山グループのテントを調べるソ連の捜索隊。テントは内側から切り開かれ、多くのメンバーが靴を履かずに靴下か裸足で外に出ていた。(PHOTOGRAPH COURTESY OF THE DYATLOV MEMORIAL FOUNDATION) 60年以上前のロシア(当時はソ連)で起きた悲惨な出来事は、秘密の軍事実験やイエティ、さらには地球外生命体との接触まで、さまざまな陰謀論を産み出してきた。しかし現時点で最も納得でき、最も理にかなっていると思われる仮説は、自動車事故の実験や映画『アナと雪の女王』で使われたアニメーションをヒントにした雪崩のシミュレーションにもとづくものだ。 スイスの2人の研究者が2021年に発表したデータは、9人の雪山登山者にむごたらしい死をもたらしたのは、不思議なほど規模の小さい遅発性の雪崩が原因だった可能性を示唆していた。雪山で

                  9人が怪死「ディアトロフ峠事件」の真相を科学的に解明か
                • 「ありえない場所」でマングローブ林を発見、海面上昇予測に関連

                  メキシコのタバスコ州を流れるサンペドロ・マルティル川に接する、エル・カカワテというラグーン。このラグーンに沿って生育するマングローブ林は、通常の生息地である沿岸部から170キロも離れた場所にある。 (PHOTOGRAPH BY OCTAVIO ABURTO) メキシコとグアテマラの国境に近いサンペドロ・マルティル川沿いを調査していた研究チームは、海岸から170キロも内陸の地点で予期せぬ光景に出合った。川沿いのきらめく大きなラグーンに沿って、マングローブの林が広がっていたのだ。 そこは、マングローブ林があるはずのない場所だった。というのも、通常のマングローブ林は、沿岸の限られた区域で、海水と高潮にさらされながら力強く繁殖するからだ。しかし、この場所は標高が9メートルもあるうえ、滝の上流にある。(参考記事:「世界最大のマングローブ林は住民を見放したのか」) 研究チームが慎重に分析した結果、さら

                    「ありえない場所」でマングローブ林を発見、海面上昇予測に関連
                  • 鼻で吸うコロナワクチンが臨床試験へ、高い効果が期待される理由

                    研究者たちは、経鼻ワクチンが新型コロナウイルスの感染をどの程度防ぐことができるかを調査している。(PHOTOGRAPH BY RJ SANGOSTI, THE DENVER POST, GETTY IMAGES) 現行の新型コロナウイルスワクチンは、重症化や死亡を防ぐ効果に優れ、変異型のウイルスに対してもかなりの防御力を発揮する。しかし、感染を100%防げるわけではない。そこで科学者らは、より強力で長続きする免疫をもたらす新しいワクチンの投与方法を模索している。有望な方法の1つは、腕に注射する代わりに、鼻の中に噴霧する「経鼻ワクチン」だ。 免疫学者によると、経鼻ワクチンはウイルスが鼻や上気道の粘膜を介して自然に感染する方法に近いため、より優れた予防効果が得られる可能性がある。どこから投与するかは、免疫反応に違いをもたらすのだ。現在、鼻腔スプレーによって投与される6種の新型コロナワクチン候補

                      鼻で吸うコロナワクチンが臨床試験へ、高い効果が期待される理由
                    • 新型コロナの臓器損傷、世界最高輝度のX線が明らかに

                      欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)の科学者ポール・タフォロー氏が参加する国際プロジェクト「ヒト臓器アトラス」は、階層的位相コントラスト断層撮影法(HiP-CT)を使って新型コロナウイルスによる死者の脳などの臓器をスキャンした。HiP-CTスキャンは、臓器の全体像からズームインして、関心のある領域の細胞まで見せてくれる。(PHOTOGRAPH BY LUCA LOCATELLI) 階層的位相コントラスト断層撮影法(HiP-CT)という強力なX線スキャン技術によって、人体の最も微細な毛細血管や、個別の細胞のレベルまで拡大した画像が撮影できるようになった。この新技術は、30人以上の科学者による国際チームが生み出した。 HiP-CTはすでに、新型コロナウイルスが血管や肺にどのような損傷を与えるかについて、新たな見方を提供している。研究者たちは、この撮影法に大きな可能性を見出しており、病気や

                        新型コロナの臓器損傷、世界最高輝度のX線が明らかに
                      • 海に沈みゆく巨大都市ジャカルタ、首都移転で人々はどうなる? 写真10点

                        スヘミさんは、インドネシアの首都ジャカルタで、小さな食堂を営んでいる。今、この食堂を海から隔てているのは、狭い未舗装道路と高さ2メートルの防波壁だけだ。スヘミさんの家族の運命は、この壁に委ねられている。 ここ北ジャカルタのムアラバル地区で育ったスヘミさんは、昔は家の前の砂浜でよく遊んでいたという。しかし2000年代に入ると、砂浜は消え去り、海水が頻繁に街なかまで押し寄せるようになった。 2002年、政府は海岸沿いに壁を建設した。沈下を続ける土地と、上昇を続ける海面に対する住民の不安をやわらげ、時間をかせぐためだ。しかしわずか5年後の2007年、近代ジャカルタ史上最悪の洪水が発生。暴風雨と集中豪雨が引き起こした洪水は、市内各地で80人の命を奪い、何億ドルもの被害をもたらした。ムアラバル地区でも暴風雨が壁を破壊し、海水がスヘミさんの家に流れ込んだ。

                          海に沈みゆく巨大都市ジャカルタ、首都移転で人々はどうなる? 写真10点
                        • アリの「ミルク」作りを発見、科学者も驚くアリ社会への貢献

                          さなぎや幼虫の世話をするクビレハリアリ(Ooceraea biroi)の働きアリ。(PHOTOGRAPH BY DANIEL KRONAUER) アリのコロニー(集団)は、100年以上前から研究され、科学者を魅了しつづけている。組織的に働くそのコロニーを、1つの「超生物体」あるいは「超個体」と考えている人もいるほどだ。 しかし、科学者たちは、アリのせわしない活動にはこれだけ注目してきたにもかかわらず、アリが幼虫から成虫へと変態する途上のさなぎの段階についてはほとんど研究してこなかった。 米ロックフェラー大学のアリ研究者であるダニエル・クロナウアー氏は、その理由を「アリのにぎやかなコロニーの中、さなぎたちは動かず、ものも食べず、何もしていないように見えるからです」と説明する。 クロナウアー氏らは2022年11月30日付けで学術誌「ネイチャー」に論文を発表し、見落とされがちなアリのさなぎがコロ

                            アリの「ミルク」作りを発見、科学者も驚くアリ社会への貢献
                          • 「良い幻覚剤」でうつ病や依存症を治す、盛んになる研究と治験

                            シビレタケ属のキノコには、向精神作用のあるシロシビンという物質が含まれている。 (PHOTOGRAPH BY ALANA PATERSON, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 米ジョンズ・ホプキンス大学の幻覚剤研究者マシュー・ジョンソン氏は、うつ病や依存症に苦しむ患者にマジックマッシュルームの有効成分であるシロシビンを投与する治療法を研究している。 2022年2月15日付けで医学誌「Journal of Psychopharmacology」に発表された研究では、重いうつ病の患者24人に対して、心理療法と併用してシロシビンを2回投与したところ、1年後の寛解率は58%だった(心理療法のみによる寛解率は3分の1程度とする研究結果がある)。 また、米非営利団体「幻覚剤学際研究学会(MAPS)」 は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者に合成麻薬のMDMAを投与する実験で、治

                              「良い幻覚剤」でうつ病や依存症を治す、盛んになる研究と治験
                            • 「世界の奇書」の謎と秘密

                              屈指の暗号とされる「ボイニッチ手稿」からニュートンが自ら書き写した錬金術の「レシピ」、ネコの足跡がついて話題になった中世の本まで、古今東西の「奇書」を集めてみた。

                                「世界の奇書」の謎と秘密
                              • 人工甘味料が腸内細菌を乱すと判明、健康に悪影響の恐れも、研究

                                甘さがきび砂糖の数百〜数千倍に及ぶものもある人工甘味料は、一般に人の体内では処理されない。カロリーがゼロであるか、少ししかないのはそれが理由だ。(PHOTOGRAPH BY TRISTAN SPINSKI) ダイエットをうたう炭酸飲料を飲んで、砂糖に付き物のうしろめたさやカロリーを気にせずに甘さを堪能する。その快感は多くの人が経験したことがあるだろう。しかし、新たな研究によると、人工甘味料はかつて考えられていたほど無害ではなく、それどころか糖尿病や体重増加のリスクを高めるかもしれない。 科学者らは以前より、人工甘味料と人間の糖尿病との関連を疑ってきたが、これまでは実験用のマウスでしか証拠は示されていなかった。今回、イスラエルの科学者たちが、同様の試験を人間で行ったところ、人工甘味料は人間の腸にすむ細菌の働きを妨げるのみならず、食後に血糖値を下げにくくする可能性があることがわかった。血中にブ

                                  人工甘味料が腸内細菌を乱すと判明、健康に悪影響の恐れも、研究
                                • 太陽系の第9惑星が見つかるかも、超巨大な“怪物望遠鏡”が挑む

                                  米SLAC国立加速器研究所で、完成の最終段階に入ったベラ・C・ルービン天文台のカメラ。189個のセンサーを持ち、32億画素の写真を撮影できる世界最大のデジタルカメラだ。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIE HEMM KLOK) 地球上から無数の望遠鏡が夜空を観測しているにもかかわらず、地球の周辺にはいまだに姿がとらえられていない未知の天体が数多く存在している。 しかし間もなく、それが変わろうとしている。南米チリに建設中のベラ・C・ルービン天文台(VRO)は、これまで知られていなかった太陽系の大部分を明らかにし、天文学に進歩と革命をもたらすことが期待されている。驚異のエンジニアリングとソフトウェア、科学的な創意工夫から生まれたVROの目的は一つ。夜空全体を丸ごと記録することだ。 確認される小惑星の数は、VROの運用が開始された直後に急増すると予測されている。1801年に最初の小惑星

                                    太陽系の第9惑星が見つかるかも、超巨大な“怪物望遠鏡”が挑む
                                  • 「巨大な農業機械で効率生産」のはずが、実は減っている収穫量

                                    米国カンザス州の農場で小麦を収穫するコンバイン。大型化した農業機械は農業の効率を飛躍的に高めた半面、土壌の深い層を押し固めて収穫量を減少させる恐れがある。(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE) 土壌生物学と土壌構造の専門家であるトーマス・ケラー氏とダニ・オー氏と、トラクターやコンバインなどの農業機械について話を始めると、遅かれ早かれ、恐竜の話題になってしまう。いったい、なぜだろう。2人は、農業機械の大型化が進んだことでかつて地球を踏みしめた最大の動物である恐竜とほぼ同じ重さになっており、世界で最も貴重な資源の1つである肥沃な土壌を押しつぶそうとしていると、最近の論文で説明している。 米国ネバダ州リノにある砂漠研究所とスイスのチューリッヒにあるスイス連邦工科大学を行き来しているオー氏は、「農業機械は100年

                                      「巨大な農業機械で効率生産」のはずが、実は減っている収穫量
                                    • 手洗いの大切さ、発見したが報われなかった不遇の天才医師

                                      ドイツの医院で医師たちが手術前に手を洗う。手洗いは、19世紀後半になるまで一般的ではなかった。(PHOTOGRAPH BY JOKER, DAVID AUSSERHOFER/ULLSTEIN BILD/GETTY) インフルエンザや新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ最も効果的な方法のひとつは、手を洗うことだ。これに異論を唱える人はほとんどいないだろう。米疾病対策センター(CDC)は、せっけんを使って20秒間手を洗い、流水ですすぐよう推奨している。(参考記事:「新型コロナウイルスに感染するとこうなる」) だがこうしたアドバイスは、いつの時代も常識だったわけではない。19世紀においては、むしろ非常識ですらあった。 1840年代のヨーロッパでは、子どもを産んだばかりの母親が、産褥(さんじょく)熱と呼ばれる病気で亡くなるケースが多かった。最良の医療を受けられた女性たちでさえ、そうだった。ハンガリー

                                        手洗いの大切さ、発見したが報われなかった不遇の天才医師
                                      • オミクロン株はなぜ感染しやすく、重症化しにくいのか、最新研究

                                        2021年1月6日、カナダのアルバータ州エドモントンで、新型コロナウイルスの迅速抗原検査のために綿棒で検体を採取する女性。オミクロン株では鼻腔ではなく咽頭をぬぐうよう勧める投稿が米国のSNS上で増えているが、抗原検査の使い方は変わるのだろうか。(PHOTOGRAPH BY ARTUR WIDAK, NURPHOTO VIA GETTY IMAGES) もし今、米国で新型コロナウイルスに感染した場合、それはオミクロン株である可能性が高い。米疾病対策センター(CDC)によると、1月8日までの1週間に米国内で遺伝子解析された症例の98%以上がオミクロン株によるものだった。 元のウイルスと比べて変異の多いオミクロン株は、これまでの主流だったデルタ株とは大きく異なるため、過去2年間で身につけたリスク管理のやり方を部分的に変える必要があるかもしれない。 オミクロン株は感染力が強くなっているだけでなく、

                                          オミクロン株はなぜ感染しやすく、重症化しにくいのか、最新研究
                                        • ハロウィンの「カボチャ」ジャック・オ・ランタンの歴史

                                          「ゴースト・ターニプ(おばけカブ)」の名で知られる、1900年代初頭のジャック・オ・ランタンの石こう像。アイルランドのカスルバー近郊にある「アイルランド国立博物館カントリーライフ館」の収蔵品。(PHOTOGRAPH BY NATIONAL MUSEUM OF IRELAND) 明かりをともしたジャック・オ・ランタン(かぼちゃのランタン)は、陽気で不気味なハロウィン定番の装飾だ。米国では、カボチャを彫ってジャック・オ・ランタンを作ることが秋の伝統になっている。 ジャック・オ・ランタンはどのようにしてハロウィンの装飾になったのか? 彫られるようになったきっかけは? 事実とフィクション、儀式や民話が絡み合うジャック・オ・ランタンの誕生秘話を紹介しよう。 ケルト人の儀式 丸い果物や野菜で人の顔を表現するという発想は、数千年前のヨーロッパ、ケルト文化に端を発する。アイルランドの首都ダブリンにあるEP

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                                          • ペスト医師、奇妙な「くちばしマスク」の理由

                                            1656年に描かれたローマの医師。ヨーロッパにおける17世紀のペストの大流行の際、医師は、クチバシ付きマスク、革手袋、長いコートを着用し、感染を防ごうとした。不吉で象徴的なその姿は、今日でもよく知られている。(PHOTOGRAPH BY ARTEFACT, ALAMY) ペストはかつて、世界で最も恐れられていた病気だった。止める術などわかりようもないパンデミック(世界的な大流行)が発生し、何億もの人々が亡くなった。犠牲者は、リンパ節が腫れあがって痛み、皮膚が黒ずむなど、悲惨な症状に苦しめられた。(参考記事:「「黒死病」はネズミのせいではなかった?最新研究」) 17世紀のヨーロッパでは、ペストの治療にあたる医師たちは、独特な防護服を身にまとい、鳥のクチバシのようなものが付いたマスクを着用していた。以来、この格好は不吉なイメージを帯びるようになるが、それにしてもなぜこんな形のマスクを使ったのだ

                                              ペスト医師、奇妙な「くちばしマスク」の理由
                                            • 自転車はスマホ並みに世界を変えた発明だった

                                              1890年代、自転車は、自立して進歩的で政治的発言力を求める女性、いわゆる「新しい女」の象徴になった。当時の女性月刊誌「Godey's」には、こう書かれている。「自転車の所有は、19世紀の娘にとって、独立宣言を公布するようなものだ」(PHOTOGRAPH BY UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE, UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY) 歴史は繰り返す。まったく同じではなくとも、確かに繰り返す。コロナ禍で自転車の需要が急増し、サイクリングとウォーキングに新たに焦点を当てた都市の再開発に各国が数十億ドルをかけようとしている今、19世紀後半の自転車の登場がいかに世界を変えたかは、振り返る価値があるだろう。 自転車は、極めて破壊的な技術だった。少なくとも今日のスマートフォンと同じ程度には。価格も手頃で、速くてスタイリッシュな交通手段であり、好きなときに好きな所

                                                自転車はスマホ並みに世界を変えた発明だった
                                              • 「産業革命前はがん患者1%」説は本当か、143遺骨で検証

                                                「死の勝利」を描いた15世紀イタリアの作者不明のフレスコ画。一般的に中世の3大疾患は、感染症、栄養失調、そして戦争や事故による負傷だったと考えられている。(ART VIA WERNER FORMAN ARCHIVE, BRIDGEMAN IMAGES) 現代では、英国人の半数以上が一生のうちにがんと診断されると言われている。一方で考古学的証拠から、産業革命以前には、がんにかかる英国人は1%程度だったと考えられてきた。 だが5月4日付けで学術誌「Cancer」に発表された論文では、この1%という見積もりは小さすぎた可能性が指摘されている。 研究では、現代のがん検出ツールを用いて、数百年前に埋葬された遺骨を分析した。その結果、産業革命以前の英国人ががんにかかる確率は、これまで考えられていたより少なくとも10倍以上高かった可能性があることが明らかになった。 この研究を主導したのは、英ケンブリッジ

                                                  「産業革命前はがん患者1%」説は本当か、143遺骨で検証
                                                • 欧州貴族の奇妙なかつらの奇天烈な歴史、はじまりは王の薄毛隠し

                                                  ルイ14世(シルバーのかつらをつけた人物)が、頭頂部の盛り上がった長い髪のかつらを愛用するようになると、宮廷の人々も同じようにかつらをつけ始めた。訪問者のザクセン選帝侯(赤い服の人物)までもが、大きなかつらをつけていた。1715年、ルイ・ド・シルベストル作。(BRIDGEMAN/ACI) 「髪を高く盛れば盛るほど神に近づく」と言ったのは、米国の歌手で女優のドリー・パートンだったが、300年前のフランスにも、同じように感じていた人物がいたようだ。派手なファッションスタイルで知られたルイ14世が、流れるような長い巻き毛のかつらをつけ始めると、周辺国の王から平民まで、ヨーロッパ中がこれを真似した。 国王と女王の「薄毛隠し」 かつらの歴史はルイ14世よりもずっと古く、何千年も前からヨーロッパや地中海諸国で愛用されてきた。史上最古のかつらは、古代エジプトのエリート層のものだったという。古代エジプト人

                                                    欧州貴族の奇妙なかつらの奇天烈な歴史、はじまりは王の薄毛隠し
                                                  • 絶滅オオカミ「ダイアウルフ」、実はオオカミと遠縁だった

                                                    赤毛のダイアウルフ(Canis dirus)とタイリクオオカミ(Canis lupus)の対決。アーティストのマウリシオ・アントン氏が研究者の意見を聞いて2020年に描いた。ダイアウルフはドール(アカオオカミ)やアビシニアジャッカル(エチオピアオオカミ)と遺伝的に近いと示唆する研究を受け、これまで考えられていたより毛を赤くした。(ILLUSTRATION BY MAURICIO ANTON) ダイアウルフ(Canis dirus)は、今からおよそ1万3000年前に絶滅したイヌ科の動物。体重は約70キロと、現在のタイリクオオカミ(Canis lupus)より大きく、南北アメリカ大陸の広い範囲に生息し、氷河期のウマや巨大ナマケモノなど絶滅した動物たちを捕食していた。 しかし、謎は数多く残っている。ダイアウルフはどこから来たのか? 現代のオオカミとどれくらい似ていたのか? 何十万年も生き延びた末

                                                      絶滅オオカミ「ダイアウルフ」、実はオオカミと遠縁だった
                                                    • オスの「武器」が大きな哺乳類、メスは「脳」が大きい、初の報告

                                                      崖の上に立つ3頭のビッグホーン(Ovis canadensis)。新たな研究により、ビッグホーンなどの哺乳類のオスは角をより大きくするように進化し、メスは脳をより大きくするように進化したことが示された。(PHOTOGRAPH BY TOM MURPHY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 4万年以上前からスイギュウの角やイノシシの牙を洞窟の壁に描いてきたように、人類は、はるか昔から大きな「武器」をもつ動物たちに魅了されてきた。しかし、角や牙の威厳に執着するあまり、メスで起こっている驚くべきことに気づかなかったのかもしれない。2024年1月12日付けで学術誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」に掲載された研究で、哺乳類のオスで戦闘用や自分の健康状態を示す大きな武器が進化すると、同種のメスでは想定より脳が発達することが初めて示された。 こ

                                                        オスの「武器」が大きな哺乳類、メスは「脳」が大きい、初の報告
                                                      • 絶滅寸前のオオカミ、10頭を野生に放つも「失敗」、米国

                                                        米国テネシー州で飼育されているアメリカアカオオカミのルビー。野生に放った際に生存率を高めるため、多くのアメリカアカオオカミが事前にこのような類似環境で育てられる。(Photograph by Jessica A. Suarez, Nat Geo Image Collection) 米国に生息するアメリカアカオオカミ(Canis rufus)は、世界で最も絶滅に近いオオカミだ。1980年には野生での絶滅が宣言され、その後、飼育下の個体を野生に放つ取り組みが続けられてきた。 2022年2月~4月、米国魚類野生生物局が長年取り組む回復プログラムの一環で、合計10頭のアメリカアカオオカミが、飼育下からノースカロライナ州の野生動物保護区に放たれた。これによって、野生下にあるアメリカアカオオカミの数は、ほぼ倍の20頭になった。 この取り組みは、センサー付きカメラを通じて世界中に配信され、自然保護団体は

                                                          絶滅寸前のオオカミ、10頭を野生に放つも「失敗」、米国
                                                        • キングコブラは実は4種だった、謎氷解、遺伝子から明らかに

                                                          インドの多雨林で葉の影から顔を覗かせるキングコブラ。キングコブラの生息域がなぜアジアの広範囲に及ぶのか、科学者たちは長い間、頭を悩ませてきた。(PHOTOGRAPH BY GABBY SALAZAR, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 爬虫両生類学者たちが長年の間、頭を悩ませてきた問題がある。それは、ヒマラヤ山脈のような、とうてい乗り越えられない障壁によって隔てられたアジアの広大な大地に生きるキングコブラ(Ophiophagus hannah)が、どうして単一種なのだろうかというものだ。加えて、体長が5.5メートルにもなるこの世界最長の毒ヘビが、なぜ生息する地域によって姿や行動が異なるのかも不可解だった。 これらの疑問が、ついに解明されるときがきた。新たな研究によると、キングコブラは4つの種に分けられるという。 2021年8月、インドの非営利団体カリンガ財団の生物学者で、

                                                            キングコブラは実は4種だった、謎氷解、遺伝子から明らかに
                                                          • サプリを信じる前に知るべき5つのこと、ずさんな表示の実態も

                                                            サプリメントは2000億ドル(約30兆円)規模の産業になると予測されているが、サプリメントには効果ばかりがあるわけではなく、有害になりうるものさえある。(PHOTOGRAPH BY HEINER MÜLLER-ELSNER, LAIF/REDUX) もし錠剤を1錠飲むだけで、突然、エネルギーがみなぎり、肌がきれいになり、心臓が健康になるとしたら? ドラッグストアのサプリメント売り場を通るたび、このような期待が手招きする。売り場には魚油のカプセルや、容器入りのコラーゲンパウダー、マグネシウムのチュアブル錠、そして、ありとあらゆるビタミン剤が並ぶ。 実に魅力的だ。世界のサプリメント産業が2025年までに2000億ドル(約30兆円)規模に達すると予測されているのも不思議ではない。 しかし、これらのサプリメントにどれくらい効果があるのか、コストに見合うのかについて、筆者はいつもかなりの疑念を持って

                                                              サプリを信じる前に知るべき5つのこと、ずさんな表示の実態も
                                                            • 冬眠前に食べまくっても平気なクマ、糖尿病予防の手がかりを発見

                                                              ハイイログマは体重360キロほどまで成長する。写真は米ワシントン州立大学のクマ飼育施設「WSUベア・センター」で飼育されているハイイログマ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT HUBNER, WASHINGTON STATE UNIVERSITY) 1日に何万キロカロリーも食べて体を太らせたあと、ほとんど動かずに数カ月間を過ごす。もし人間がこんな生活をすれば、健康状態は最悪になるだろう。ではなぜ、ハイイログマ(グリズリー)はそんな生活をしても糖尿病にならないのだろうか。科学者たちを長年悩ませてきたこの疑問が解かれつつある。 米ワシントン州立大学の研究者たちは、ハイイログマ(Ursus arctos)でインスリンの効き具合(抵抗性)をコントロールできる遺伝子的な仕組みがあることを示す手がかりを発見した。2022年9月21日付けで学術誌「iScience」に掲載された論文によると、この

                                                                冬眠前に食べまくっても平気なクマ、糖尿病予防の手がかりを発見
                                                              • 失われた大陸「ジーランディア」の全貌がついに判明、範囲明確に

                                                                ニュージーランド南島の西海岸にあるパンケーキ・ロックス。この島国はジーランディアという水没した大陸の先端にあたる。2023年、ジーランディアのマッピングがようやく完了した。(PHOTOGRAPH BY JOANA KRUSE, ALAMY STOCK PHOTO) 長年にわたる探査と調査の末、南太平洋に沈む大陸「ジーランディア」の地質図が完成した。岩石サンプルと地域の磁気データなどを調べた結果、ニュージーランドを取り囲む海に隠された範囲が明確になった。この大陸地殻が水没したのは何千万年も前で、面積は約500万平方キロに及び、先住民マオリの言葉で「テ・リウ・ア・マウイ」と呼ばれている。論文は学術誌「Tectonics」に2023年9月に発表された。

                                                                  失われた大陸「ジーランディア」の全貌がついに判明、範囲明確に
                                                                • 炎症を抑えてうつ病と闘う、食べ物の効果や新治療法など研究進む

                                                                  体と脳の炎症はメンタルヘルスを悪化させることが知られている。最近の研究により、食生活を見直し、瞑想や運動を取り入れることで、炎症を抑制し、うつ病や不安を改善できることがわかってきた。(IMAGE BY SCIEPRO, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 体の慢性疾患は心の健康にも深刻な影響を及ぼす。米疾病対策センター(CDC)によると、がん患者の42%、関節リウマチ患者の42%、糖尿病患者の27%、心血管疾患患者の17%、アルツハイマー病患者の11%がうつ病を合併するという。 これらの疾患には炎症という共通点がある。慢性疾患を抱えていることが大きなストレスになるのは明らかだが、炎症そのものがメンタルヘルスを悪化させている側面もあることが、近年、明らかになってきている。 炎症とうつ病との生物学的な関わりの研究は、新たな薬の使い方や、炎症を管理してメンタルヘルスを改善する方法につい

                                                                    炎症を抑えてうつ病と闘う、食べ物の効果や新治療法など研究進む
                                                                  • 2022年に楽しみたい8つの天文イベント

                                                                    3月下旬から4月上旬にかけて、日の出の約1時間前に南東の方角を見ると、空の低い位置で金星、火星、土星が集まって細長い三角形を作っているのが見えるだろう。3月27日と28日には、明けの三日月がそのすぐそばを通過する。 毎朝観測していると、三角形は次第に平たくなっていることに気付くはずだ。そして、4月1日に3つの惑星は横並びになる。その後、土星が火星へ近づいていき、最接近する4月4日には、2つの星が月の見かけの直径ほどの距離になる。 4月30日:部分日食 地球と太陽の間に月が入り、太陽の一部が欠けて見えるという部分日食が、2022年には2回起こる(ともに日本では見られない)。1回目は4月30日、南米大陸南部、南極大陸の一部、太平洋上および南極海上の一部から見ることができる。最大食は協定世界時20時41分(日本時間5月1日5時41分)で、この時太陽の64%が月に隠れる。 最も大きく欠けた太陽を見

                                                                      2022年に楽しみたい8つの天文イベント
                                                                    • 凍結ミイラ「アイスマン」発見から30年、明らかになった10の事実

                                                                      アイスマン「エッツィ」の復元像。エッツィは約5200年前、ヨーロッパアルプスで生活していた。1991年9月19日、ドイツ人の登山者によって、自然環境下でミイラ化した遺体が発見された。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 今から30年前の1991年9月、オーストリアとイタリアの国境の山岳地帯で、ヨーロッパで最も有名なミイラが発見された。5000年以上前の凍結ミイラ「アイスマン」だ。 標高約3200メートルの湖のそばの氷原で、うつぶせの状態で横たわっていたこのミイラは、発見地エッツタール・アルプスから「エッツィ」と名付けられ、たちまち世界の注目を集めた。新石器時代のヨーロッパを生きた彼の生活や壮絶な最期は、数々の本やドキュメンタリーに描かれ、長編映画まで制作された。 エッツィは現在、イタリア、ボルツァーノの南チロル考古学博

                                                                        凍結ミイラ「アイスマン」発見から30年、明らかになった10の事実
                                                                      • スペースXの“銀河鉄道”人工衛星、多すぎでは? 専門家に聞いた

                                                                        米国コロラド州のブラックキャニオン国立公園の空を長時間露光で撮影。自然の光と人工的な光の動きの両方を捉えている。地球軌道を周回する何千もの人工衛星は宇宙のかなたにある天体より何百万倍も明るく輝くことがあり、天体観測の妨げになっている。(PHOTOGRAPH BY BABAK TAFRESHI) UFOの一団、奇妙な配列の流星群、ドローンショー。これらは、イーロン・マスク氏の航空宇宙企業であるスペースX社の巨大通信衛星網「スターリンク」の人工衛星が、最近間違われたもののほんの一部だ。日本では「銀河鉄道のよう」と言われることもある。 これらの衛星は地球の辺境にブロードバンドインターネットをもたらしている。通常、最終的な軌道である高度約550キロ地点に向かう途中の、高度300キロ付近の地球低軌道で目撃される。上昇するにつれて暗くなり、互いの距離が離れ、数週間後、ほとんど視認できなくなる。天文学者

                                                                          スペースXの“銀河鉄道”人工衛星、多すぎでは? 専門家に聞いた
                                                                        • 骨が「ミネラルの電池」に進化、4億年前の魚で証拠発見

                                                                          約4億年前に生きていた顎のない甲冑魚(かっちゅうぎょ)。骨細胞を含む骨があり、筋肉に重要なミネラル分を供給することが可能だった証拠が新たに発見された。(ILLUSTRATION BY BRIAN ENGH) 古生代の魚の化石から、骨の進化における大きな転換点が明らかになった。3月31日付けで学術誌「Science Advances」に発表された論文によれば、ヒトの骨にあるのと同様な骨細胞がおよそ4億年前に発達し、いわばミネラル分の「電池」として機能していたという証拠が確認された。 ヒトなどの脊椎動物の場合、骨は主に体内の支えとなると同時に、絶えず損傷を修復して自らを維持しながら、血流に重要な栄養素を供給している。対して、ごく初期の骨は大きく異なっていた。魚の体を保護する殻の役割を果たしており、むしろコンクリートのようなものだった。骨がなぜこれほど進化を遂げたのかは大きな謎だが、初期の魚の表

                                                                            骨が「ミネラルの電池」に進化、4億年前の魚で証拠発見
                                                                          • 新型コロナ、ことごとくパニックに陥る理由と対策

                                                                            米バージニア州のスーパーマーケット「ターゲット」の商品棚。いつもならウェットティッシュや消毒液、トイレットペーパーが隙間なく並べられているが、新型コロナウイルスの影響で人々が買い占めに走ったため、今は空になっている。「パニック買い」を引き起こすものとは何か。心理学者たちは、強いストレスのある状況下で、自分で事態をコントロールしたいという欲求が根底にあるという。(PHOTOGRAPH BY WIN MCNAMEE, GETTY IMAGES) 新型コロナウイルスが世界に広がり始めると、トイレットペーパー、消毒液、マスクを求め、各地で客が店に殺到した。感染者の数が増え、各国の政府や自治体は大規模な集会を自粛させ、店を閉めさせて、他人と一定の「社会的距離」を保つよう促している。それが人々の不安をあおっていわゆる「パニック買い」を助長し、店の棚はあっという間に空になってしまった。 昔から人間は、予

                                                                              新型コロナ、ことごとくパニックに陥る理由と対策
                                                                            • 現実味を帯びる「幻覚剤療法」、専門家の育成が急務に、米国

                                                                              メキシコ、ティファナ郊外にある幻覚剤療法の施術施設で、強力な幻覚剤(コロラドリバーヒキガエルの毒から抽出されたもの)を吸入した後、ケアを受ける元海兵隊員のジェナ・ロンバード・グロッソさん。(PHOTOGRAPH BY MERIDITH KOHUT, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 長年うつ病に苦しんでいるレネ・セントクレアさんは数年前、幻覚作用を持つ薬物ケタミンを用いた治療の最中、自分の脳が体から切り離されて浮かび上がり、部屋の向こうに移動してゆく光景を見て恐怖に襲われた。 「ゾッとするほど恐ろしかったです。もう脳は戻ってこないのではないかと思いました」。米カリフォルニア州サンディエゴに住む弁護士で、51歳のセントクレアさんはそのときの状況を振り返る。彼女の治療に付き添っていた看護師の要請により、精神科医がすぐに駆けつけて、優しく言葉をかけながらセントクレアさんの手をし

                                                                                現実味を帯びる「幻覚剤療法」、専門家の育成が急務に、米国
                                                                              • ノンアル飲料はやはりお酒の量を減らす、実力を示す初の研究

                                                                                米ニューヨーク市のカクテルバー「ヌベルズ」で提供しているノンアルコールカクテル(モクテル)「ニノ・メロン」。アルコールが健康に及ぼす影響が知られるようになったおかげで、上質なノンアルコールカクテルの人気が高まっていると専門家は指摘する。(PHOTOGRAPH BY KRISTA SCHLUETER, THE NEW YORK TIMES/REDUX) ジョン・デバリー氏が米ニューヨーク市でバーテンダーとして働き始めた2008年頃、ノンアルコール飲料(アルコールテイスト飲料)の提供は珍しく、味もそれほど良いとは言えなかった。しかし最近では、人気ビールの低アルコールまたはノンアルコール版や、洗練されたノンアルコールカクテルの種類が増え、人気が急速に高まっている。そのうえ、ノンアル飲料の提供で飲酒量を減らせることを世界で初めて示したとする論文が10月2日付で医学誌「BMC Medicine」に発

                                                                                  ノンアル飲料はやはりお酒の量を減らす、実力を示す初の研究
                                                                                • 「ガスコンロじゃないほうが良い」科学が示す二つの理由

                                                                                  ガスの燃焼によって排出される物質は、室内に蓄積して健康に有害な濃度に達し、呼吸器系疾患をもたらすリスクが高い。(PHOTOGRAPH BY MIGUEL ANGEL FLORES, GETTY IMAGES) 調理には炎を使うのが当たり前だと、シェフのアマンダ・コーエン氏は信じていた。ところが、マンハッタンの小さな一角にレストランをオープンしたとき、ガス管が引かれていなかったため、仕方なくIHクッキングヒーターを導入することにした。 すると、そのあまりの使いやすさに今ではすっかりIH派になり、「もう二度とガスコンロには戻れません」とまで言うようになった。その後、広い店舗スペースに移転したときには、ガス管が引かれていたにも関わらず、わざわざIHコンロと電気オーブンを設置した。 同じような経験をしたのはコーエン氏だけではない。同業者のエリック・リパート氏や、ソーシャルメディアで人気のシェフ、ア

                                                                                    「ガスコンロじゃないほうが良い」科学が示す二つの理由