足を踏み外した瞬間 C社は先代社長が技術畑だったこともあり、堅実な設計に定評があった。その分、設計部門では保守的な考えが根強かった。この姿勢に不満を持っていたのが、営業部長だ。彼は「顧客の要求を全て引き受ける」ことこそがビジネスの鍵であると考え、強気の受注方針を採った。そして、それが功を奏して売り上げが拡大。営業部門の発言力は、社内でも抵抗できる者がいなくなるほど強大になっていった。 営業部門は注文を受ける前に「できるかできないか」を議論するようでは、新たな注文は取れないと考えていた。まずはどんな依頼でも受注した上で技術を開発し、顧客が望む製品を造るべきだという姿勢だった。これに対し、設計部門は高い技術力を持ってはいるが、安請け合いを極端に嫌う風土があった。 設計部門は決して技術的な挑戦から逃げているわけではなかった。営業部門からの受注可否の打診に対し、現在の技術力など客観的な状況を踏まえ