その途上のインドで、私は人生が変わるような体験をした。ある朝、親しくなったインド人に屋台に連れて行かれ、そこで食事をご馳走になった私は、気がつくと身ぐるみ剥がされて道ばたの下水道に横たわっていた。どうやら飲食物に睡眠薬が混入されていたようだった。幸い、パスポートは腰に巻き付けていたベルト状の小袋の中に残されており、ブーツの内底に縫い込んでいた100米ドルほどのトラベラーズチェックが無事だったため、なんとか旅行は続けることができたが、その後は心身が優れない状態が長く続いた。 そんな乞食同然になった日本人の若者にも、インドやネパールの人々は限りなく優しかった。 (三浦英之『涙にも国籍はあるのでしょうか』新潮社、2024) こんばんは。バックパッカーだったときに私も似たような経験をしたことがあるので、思わず引用してしまいました。マネーベルトの中に隠しておいたトラベラーズチェックの有り難さといった