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  • ルイスのサイード批判:「オリエンタリズムの問題」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    先日、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』の1995年あとがきや、新装版への2003年序文を訳した。 訳しても読んだ人は、たぶんぼく自身以外はあまりいないと思う。長ったらしいし、テメーらみんな、度しがたい怠けものだから。が、読んだ人なら (そしてもちろんあの『オリエンタリズム』をまともに読んだ人なら) その中でこれまで「オリエンタリスト/東洋学者」どもが、無知と偏見まみれでイスラム世界を歪めまくり、実態とは似ても似つかないものに仕立て上げ、自分たちのイデオロギーにあうように歪曲して、植民地支配と軍事支配に都合良く描きだして列強の世界収奪と支配に奉仕してきた様子が描かれており、そしてその代表例としてバーナード・ルイスがやり玉にあがっているのをご存じだろう。特に、1995年あとがきでは、ルイスが『オリエンタリズム』やそれが引き起こした風潮に批判を述べた Islam and the Wes

      ルイスのサイード批判:「オリエンタリズムの問題」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    • diffとしての表現、あるいはほぼあらゆる (人間的な) 価値は、逸脱である - 山形浩生の「経済のトリセツ」

      Executive Summary 多くのものはいまや、価値が本来の機能ではなく、それ以外の本来の機能との差分/diffに宿るようになっている。酒はもともとアルコールの酩酊感のためのものだが、いまやアルコール以外の不純物がお酒の味の主役になっている。食事は栄養摂取が本来の機能だが、グルメ料理はそれを離れ、単なる舌や感覚への刺激だけを重視するようになっている。 今後、そうした部分が増えるのではないか。車もバイクも、「味わい」とされるのはニュートラルな移動機能から逸脱した歪み。いずれ、そうした部分だけソフトウェアなどで再現されてそれだけが分離されて取引され、その土台となるハード/本来の機能部分はコモディティ化してどんどん低価格化する世界がやってくるのではないか? ジャクソン・ポロックなどある種の芸術は、いちはやくそうした diff だけの世界を予見しているようでもある。 かなり前から考えている

        diffとしての表現、あるいはほぼあらゆる (人間的な) 価値は、逸脱である - 山形浩生の「経済のトリセツ」
      • 差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!|Hayakawa Books & Magazines(β)

        <a href="http://archive.today/Y4864"> <img style="width:300px;height:200px;background-color:white" src="https://archive.md/Y4864/c916016449c6818c2b7a52673ec890f7ef77f545/scr.png"><br> 差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!|Hayakawa Books …<br> アーカイブされた 2022年11月17日 02:54:41 UTC </a> {{cite web | title = 差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!|Hayakawa Books … | url = ht

          差別をなくすために差別を温存している? 『「社会正義」はいつも正しい』の読みどころを訳者・山形浩生が解説!|Hayakawa Books & Magazines(β)
        • 山形浩生「これは驚いた。言語と音楽(そして踊り)についての、コロンブスの卵のような理論だ」『〈脳と文明〉の暗号』書評|Hayakawa Books & Magazines(β)

          山形浩生「これは驚いた。言語と音楽(そして踊り)についての、コロンブスの卵のような理論だ」『〈脳と文明〉の暗号』書評 ベストセラー『ヒトの目、驚異の進化』のマーク・チャンギージーが「聴覚」を糸口に人類誕生の謎に迫った話題作、『〈脳と文明〉の暗号――言語と音楽、驚異の起源』(中山宥訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫)。本記事では評論家・翻訳家の山形浩生氏による書評をお届けします! これは驚いた。言語と音楽(そして踊り)についての、コロンブスの卵のような理論だ。言語は不思議なもので、霊長類ですら大した言語活動をしないのに、ヒトだけ突然、やたらに複雑な言語を駆使できるようになる。チョムスキーやピンカー的な発想だと、言語というのは人間で突然発生した、完全に生得的な能力だ。つまり、人間はなんだか知らないけれど他の動物とはまったくちがい、生まれながらに言語を習得する能力を持っている、というのがかれらの

            山形浩生「これは驚いた。言語と音楽(そして踊り)についての、コロンブスの卵のような理論だ」『〈脳と文明〉の暗号』書評|Hayakawa Books & Magazines(β)
          • 「誰も何も言わない世界と、読まれなくても誰かが何か言う世界は、多分違う」──山形浩生さん(後編)|就活サイト【ONE CAREER】

            山形浩生の喋(しゃべ)る姿というのは、テレビやYouTubeではあまり見たことがない。最近はラジオのコメンテーターもされているから声は知っている。そんな相手が、目の前で楽しそうに喋っている。会うことなんてないだろうと思っていただけに、僕はフワフワとした現実感のない、けれどインタビューを成立させるために必死な様相で会話を続けていた。 山形といえば毒舌の書評が有名なのだが、目の前にするととても優しそうな、そして真面目な人だ。ユーモアも彼のブログで目にするそれと変わらなくて、会話の途中でしょっちゅう笑いが起きる。僕にとっては想像通りの格好のよい著作家であった。 しかし、まだインターネットの話も、経済の話も聞いていない。時間は半分以上過ぎている。どの話も中途半端に切りたくはない。そんな緊張感を持ちながら、就職後の話を聞いた。 大学院での研究が発端になって、野村総合研究所への就職を選んだ山形。修士研

              「誰も何も言わない世界と、読まれなくても誰かが何か言う世界は、多分違う」──山形浩生さん(後編)|就活サイト【ONE CAREER】
            • ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

              ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』を勝手に翻訳している話をした。 cruel.hatenablog.com で、引き続きやっていて、第2講もいまのところ、なかなかおもしろい。まだ前半だけだけれど、言われていることはやはり単純だ。 頻出する観念として「異世界性」と「この世性」みたいなのがある。 異世界性は、来世の天国で処女が17人!とか、この世が気に食わんから異世界転生するなろう小説みたいなもの欲しげな話とはちがう。そういう異世界転生って、この世の価値観のまま自分の都合のいい世界になるってことで、「この世性」の権化。 本当の異世界性というのは、この現実は現実ではなく、永遠不変の絶対的な善の世界があるのよ〜みたいな話。 この手の論者はみんなインチキ。なんだけれど、西洋思想では圧倒的にこの異世界性が大きな影響を持つ。宗教なんてみんな神さまだのといったありもしないものを押しつけるという理屈で、この異

                ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
              • 昔話:ティモシー・リアリーの想い出など - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                ぼくが初めて訳した商業出版は、H・R・ギーガーの画集だったんだけれど、それを出したトレヴィルという西武系の出版社の編集者川合さん (というか彼一人しかいなかった) が「じゃあ是非これもやってください!」と言って翻訳させられたのが、ティモシー・リアリーの『神経政治学』だった。 神経政治学―人類変異の社会生物学 作者:ティモシー・リアリー,ロバート・アントン・ウィルソン,ジョージ・A・クープマントレヴィルAmazon ドラッグやったら脳の回路が活性化して新しい世界が見えるぜ、それでみんなニュータイプになって宇宙にさいくだ! という、まあまぬけもいいところな本だったが、一応張り切ってやって、ついでにこれで大学院の学費は自分で稼げるぜ、親の世話にはならないぜ、と大見得を切ったんだが、なんと大学院に入る前に仕上げたのに、実際に本が出てお金が入ってくるまでに2年以上かかった。別に訳文にはぜんぜん文句は

                  昔話:ティモシー・リアリーの想い出など - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                • cakes(ケイクス)

                  cakesは2022年8月31日に終了いたしました。 10年間の長きにわたり、ご愛読ありがとうございました。 2022年9月1日

                    cakes(ケイクス)
                  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげてしまいました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第11講 (最終回) もちろん、このpdfを読むとそれなりにウダウダしい。だが、そこで言われていることは、第1講と同じでとてもシンプルではある。それはつまり、以下の通り: 「存在の連鎖」という観念は最終的に、二千年かけて詰めていったらボロボロでまったく整合性がないことが明らかになった。 だから破綻して、すると一気に忘れられてしまった。 思想そのものの現代的な価値はまったくない。 ただこういう変なものにハマる精神の働き (すでに蒸し返すバカも出てる) の記録という意味はあるかも。

                      ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                    • なぜ歪曲されたプーチン像が流布されるのか? ウクライナ戦争をもっと正しく理解するために日本人ができる情報源の選択 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け

                      #2 「プーチンは北方領土を返す気がない」 山形 日本におけるプーチン報道についてお聞きできますか。ウクライナ戦争の開戦直後、日本のロシア専門家と言われる人たちの発言は情けなかったと思います。これまで北方領土問題でも、プーチンが「引き分け」と言っただけで二島返還論を示唆したという報道が出たりしました。まず外務省や政府筋に「こう話を持っていきたい」という意向があって、それに忖度する人が重用されるうちに内輪の構図ができてしまったのではないか、と見ているのですが、黒井さんは日本のプーチン報道をどうご覧になっていますか。 黒井 日本の報道の中心の中心は、実は僕はよく知らないんですよ。たまに呼ばれて「北方領土は返ってきませんよ」などと言って、変なことを言っていると思われていたくらいでした(笑)。 北方領土に関しては、外務省は「北方領土返還交渉はいけます」と言っていますが、モスクワの大使館ではロシア高

                        なぜ歪曲されたプーチン像が流布されるのか? ウクライナ戦争をもっと正しく理解するために日本人ができる情報源の選択 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け
                      • cakes(ケイクス)

                        cakesは2022年8月31日に終了いたしました。 10年間の長きにわたり、ご愛読ありがとうございました。 2022年9月1日

                          cakes(ケイクス)
                        • プーチン本その3:『オリバー・ストーン オン プーチン』:ストーンが頼まれもしない反米提灯かつぎをする情けない本/映画 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                          Executive Summary 『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋、2018) は、同名のプーチン連続インタビューシリーズの文字版。2015-2017という、プーチンやロシアをめぐる各種の大きな事件が次々に起きた時代で、本当であればまたとない情報源となれたはず。ところが、オリバー・ストーンは自分がしゃしゃり出て、頼まれもしないのに反米妄想をふいて呆れられ、そしてそこにつけ込まれてなんでもアメリカの陰謀のせいにするプーチンの主張を全部鵜呑みにしてしまい、明らかに変なことを言われても何もつっこみを入れず、話も深まらない。おかげで、この貴重な機会が完全に無駄になり、プーチンの本当の腹がまったく見えないままで終わってしまう。映像版は、舞台となったクレムリンや大統領専用機、さらにプーチンの余裕の笑みは一見してもいいが、冗長。 ダメなプーチン本は、もちろん日本だけに限られるわけではな

                            プーチン本その3:『オリバー・ストーン オン プーチン』:ストーンが頼まれもしない反米提灯かつぎをする情けない本/映画 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                          • Anderson, "Che Guevara":壮絶な調査に基づく空前絶後のフェアなゲバラ伝 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                            Executive Summary すさまじく分厚いゲバラの決定版伝記。綿密で詳細な調査とインタビューはとにかく圧巻。キューバで長年暮らして関係者の資料を大量に閲覧、ゲバラ懐柔役だったはずの老練なソ連外交官から、恋する乙女まがいの赤面するようなコメントをモスクワで引き出し、最後の部隊の生き残りにスウェーデンまで出かけてヒアリング。すごい! 思想形成や、戦略的な評価といった大局的な視点はいま一つ薄い。だが、その調査が浮き彫りにする、ゲバラの人格的な信じがたいほどの魅力、およびそのとんでもない滅私奉公の独善ぶりは、これまでの伝記などで見られる、とても単純かつ純粋な理想主義者というイメージにかなり修正を迫るものではある。 そして本書はそのすさまじい調査により、ゲバラの最期についての決定的な証言を入手し、そのおかげで謎だったゲバラの埋葬場所まで明らかになり、ゲバラ遺体のキューバ帰還にまで貢献した—

                              Anderson, "Che Guevara":壮絶な調査に基づく空前絶後のフェアなゲバラ伝 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                            • ノーベル経済学賞 2023−2028年トトカルチョ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                              2022年ノーベル経済学賞は、バーナンキ、ダイアモンド、ダイブヴィグ (ディブヴィグ? 字面でしか見たことないので読みをよく知らない) に決定した。金融・銀行系ね。 そういえば、むかしの自分の予想でもバーナンキは入れていたなあ、と思って昔のエントリーを見ると、ほうほう、なかなかよいではないの。2020年でバーナンキは次点扱い。2017年についての表を見ると、その後六年で3人は含まれている。まあ15人もあげてるから、ヘタな鉄砲もナントやらだろう、と言われればそれまでなんだけどね。が、そんなに悪くもないんじゃないか。ジャンル的にはかなり当てていると一応は自画自賛。 cruel.hatenablog.com でも表を見ると、もう他界した人も結構いる。ジョルゲンソンは今年他界してるのか……2020年にお目にかかったときにはシャキシャキだったのになあ。その他、すでに取った人、すでに他界した人、いろい

                                ノーベル経済学賞 2023−2028年トトカルチョ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                              • Xユーザーの加野瀬未友さん: 「メディア界隈で、三浦瑠麗氏を見出した人って、著書を出すのに関わった版元の人以外だと、山形浩生氏はかなり最初期。山形浩生氏は『日本に絶望している人のための政治入門』を大絶賛して、自分もついそれを信じてしまった。あとで三浦瑠麗氏の様々な言動を見て信じたのを反省した」 / X

                                  Xユーザーの加野瀬未友さん: 「メディア界隈で、三浦瑠麗氏を見出した人って、著書を出すのに関わった版元の人以外だと、山形浩生氏はかなり最初期。山形浩生氏は『日本に絶望している人のための政治入門』を大絶賛して、自分もついそれを信じてしまった。あとで三浦瑠麗氏の様々な言動を見て信じたのを反省した」 / X
                                • https://twitter.com/EleniNumber5/status/1600357518437683203

                                    https://twitter.com/EleniNumber5/status/1600357518437683203
                                  • シュレーダー/石岡瑛子『MISHIMA』に見る、石岡瑛子の弱点:すべてを見せないと気が済まない! - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                    こないだ石岡瑛子展にいってきて、大正解だったというのは前に書いたとおり。何やら終わり近くは連日満員だそうで、ご愁傷様です。 cruel.hatenablog.com さて、そこでも書いたことだけれど、その中であのMISHIMAの金閣寺が、ちょっと浮いていて空回りしている感じがした。でも実はぼくはMISHIMAは観ていなかった。公開当時、右翼に脅されて上映中止になり、なかなか観る機会がなかったこともある。そして……あんまりおもしろそうでなかったから。そもそも三島由紀夫があんまり好きではないのと、映画自体についてもそれほどのもんじゃない、という評判を聞いていたこともある。 その一方で「それほどのもんじゃない」評の半分くらいは、右翼が目の色変えて止めなきゃいけないほどのものじゃない、という主旨だった。でも「それほどのもんじゃない」のが、ある政治的な見解の描写なのか、映画そのものなのかはわかってい

                                      シュレーダー/石岡瑛子『MISHIMA』に見る、石岡瑛子の弱点:すべてを見せないと気が済まない! - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                    • ケインズ『繁栄の手段』(1933) やっちゃった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                      ケインズ『戦費調達の方法』(1940) をやったついでに、全集でセット販売されてる『繁栄の手段』(1933) もやってしまったけど、全部書いてあるじゃん。これだけ読んで理解すればもう十分でしょう。「金融緩和だけで云々」「波及経路が」とか聞いた風な口きくまでもなく終わりじゃん。すべて書いてあるではないの。 ケインズ『繁栄の手段』 (1933) pdf 470kB 能書きはまた後で書くが。 飛行機の搭乗直前に急いであげてアップしたので まちがいや誤変換あると思うので、気がついたらご教示ください!

                                        ケインズ『繁栄の手段』(1933) やっちゃった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                      • 焚書坑儒の続き:学者もその批判も昔から同じ。徐福も、無駄金づかい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                        以前、史記の焚書坑儒の話をした。 cruel.hatenablog.com ここでは、焚書坑儒の理由が封禅の儀式をめぐる話と関係があるんだろう、という説を紹介してそれの通りに書いた。でも、その後も史記をちまちま読んでいたんだが、なんか秦の始皇帝のところを読むと、普通に焚書坑儒の理由は書いてある (前回は、その封禅の儀式のところだけつまみ食いした)。きちんと部下からの進言があって、それをもとにやったのね。そしてそこの部分だけでも、封禅の儀式の話と主張はまったく同じだ。儒学者どもは、実用性のある役に立つ知識を持たず、何も結論を出せず、そのくせ批判だけは口うるさかった。 それよりもっと手厳しいかも。学者が訓詁学に堕している理由、それがかつてはオッケーだった理由も、そのえらい部下はきちんと分析し、進言している。時代とともに学問も進歩しなければいけない! 立派です。 その当該ヶ所を以下に引用。 始皇

                                          焚書坑儒の続き:学者もその批判も昔から同じ。徐福も、無駄金づかい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                        • ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』アンチョコ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                          はじめに 数日前に、サイモン『人間活動における理性』の海賊訳を公開したら結構みんな喜んでくれて幸甚。 cruel.hatenablog.com が、これを実際に読んでくれた人でも、結構苦労しているらしい。 note.com でてくる用語として、馴染みのないものが結構ある、というのがつまづく原因となっているみたいだ。扱っている範囲が野放図に広くて、経済学の効用理論の話が認知心理学みたいな話に逸れつつ、そこから進化論の話に入って、それが制度論だのメディア論だのに飛び火して、という代物だから仕方ないといえば仕方ない。 が、実際にでている話はそんな面倒なことではない。馴染みのない用語の大半は、無視していいものばかり。ゲーデルとか、アリストテレスとかね。 そういうのはただの、インテリの符牒だから気にしなくていい。「アリストテレス云々」というのは、古来の正統派学問の伝統でずっと、という意味でしかない。

                                            ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』アンチョコ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                          • ケインズ『人物評伝』全訳おわった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                            epub版ケインズ『人物評伝』表紙。 年明けてからケインズ『人物評伝』を訳し始めて、月の内になんとか終わりました。 ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』pdf 2.7MB ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』epub 1.4MB epubは、pandocで機械的に変換しただけ。現在は、もとの翻訳は半分くらいをlatexで書き、残り半分はmarkdownで書いて、pandocでlatexにして、そのlatexをもとにepubにしている。記事毎の改ページとか、きちんとできていないし、まだepubとして改良の余地はたくさんあると思う。今後これは改良しましょう。 (ふーむ、epubってxhtmlのかたまりなのか……ちょっとそれを知っていじってみました。表紙も一応くっつけておきました。このままアマゾンにでも出そうかね。xhtmlのかたまりということは、markdownを使う必然性はあまりなく

                                              ケインズ『人物評伝』全訳おわった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                            • 一ノ瀬翔太 on Twitter: "『「社会正義」はいつも正しい』解説記事の公開を停止しました。私はテキストが持ちうる具体的な個人への加害性にあまりに無自覚でした。記事により傷つけてしまった方々に対して、深くお詫び申し上げます。記事の公開後、多くのご批判を社内外で直接・間接に頂き、"

                                              『「社会正義」はいつも正しい』解説記事の公開を停止しました。私はテキストが持ちうる具体的な個人への加害性にあまりに無自覚でした。記事により傷つけてしまった方々に対して、深くお詫び申し上げます。記事の公開後、多くのご批判を社内外で直接・間接に頂き、

                                                一ノ瀬翔太 on Twitter: "『「社会正義」はいつも正しい』解説記事の公開を停止しました。私はテキストが持ちうる具体的な個人への加害性にあまりに無自覚でした。記事により傷つけてしまった方々に対して、深くお詫び申し上げます。記事の公開後、多くのご批判を社内外で直接・間接に頂き、"
                                              • プーチン重要論説集 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                なんかこんなのを作ってしまったので、読みたい人は読みなさい。何かお気づきの点があればご教示たもれ……と思ったら商業出版の話が出たので、無料公開は停止。 なお、ウクライナ侵攻のときの演説が変だという検討については、第4期のまとめp.222- と、その対比で第3期のまとめp.153-をお読みください。 プーチン重要論説集 (星海社新書) 作者:ウラジミール・プーチン星海社Amazon 例によって、デスクトップ環境ではしおり/目次リンクがめちゃくちゃになるので。Adobeに上げてpdf化した。昨日よりは便利になったかな?

                                                  プーチン重要論説集 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                • ほとんどの日本人が知らない金融危機の裏側

                                                  コンテンツブロックが有効であることを検知しました。 このサイトを利用するには、コンテンツブロック機能(広告ブロック機能を持つ拡張機能等)を無効にしてページを再読み込みしてください。 ✕

                                                    ほとんどの日本人が知らない金融危機の裏側
                                                  • ケインズ「H.G・ウェルズ『クリソルド』書評」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                    最近、初版諸般の事情でケインズの伝記をいっぱい読んでいるんだが、うーん、スキデルスキーのものすごい分厚い三巻本とかがんばって見ているんだけど、平板だなあ、という感じ。分厚いのだと、その物量にうんざりしてそういう印象になりがちだというのもあるので、あとで再読はするけど。 John Maynard Keynes: Volume 2: The Economist as Savior, 1920-1937 作者:Skidelsky, Robert発売日: 1995/01/01メディア: ペーパーバック John Maynard Keynes: Fighting for Freedom, 1937-1946 作者:Skidelsky, Robert発売日: 2001/12/01メディア: ハードカバー チェ・ゲバラのいろんな伝記をたくさん読んだときもそうだけど、長く分厚く詳しい伝記を書いても、手当た

                                                      ケインズ「H.G・ウェルズ『クリソルド』書評」 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                    • プーチン本その2:プーチンご自身『プーチン、自らを語る』:基本文献。ストレートで明解なインタビュー集 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                      Executive Summary プーチン他『プーチン、自らを語る』(扶桑社、2000) は、突然ロシア大統領になってどこの馬の骨ともわからなかったプーチンが、生い立ちから大統領としての問題意識までを率直に語ったインタビュー集。幼少期の記述などはこれがほとんど唯一の文献で、他の本はこれに対する註釈でしかない。また、まだ隠蔽すべき悪事などがないので、かなり率直かつ正直に語られているし、全部が本当ではないとはいえ、一言半句に勘ぐりを入れる必要もなく、ストレートに読める。家族のインタビューも交え、プーチンの全体像をしっかりまとめているし、またチェチェンへの高圧的な態度、反体制ジャーナリストへの冷淡さなどもはっきり出ている。なお英語からの重訳だが、英語版のほうが追加のインタビューを加え、ロシア語版で削除された部分も含んでいることもあり、重訳のデメリットよりはメリットのほうがずっと高いので、懸念に

                                                        プーチン本その2:プーチンご自身『プーチン、自らを語る』:基本文献。ストレートで明解なインタビュー集 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                      • 「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                        ポラニー『ダホメ王国と奴隷貿易』、Kindle版にして少しお金稼ごうぜと思って、ちょっと見直しておりました。 cruel.hatenablog.com ポラニーがこの本で言っている「社会に埋め込まれた経済」というのは、ピケティが『資本とイデオロギー』(もうすぐ出ます!) でも引き合いに出していて、資本主義と市場経済の暴走を許してはいけない、それは格差増大をひたすら肯定して不平等な社会の到来を招いてしまう、経済活動はもっと社会に奉仕するものとして、社会に埋め込まれるべきだ、という主張がポラニーの、特に『大転換』を軸に述べている。 でも今回思ったんだけれど、この議論というのは成り立つんだろうか。ポラニーに準拠する限り、非常に歪んだ議論なのでは? まず一つ。経済が社会に埋め込まれた状況としてこのダホメ本で挙がっているダホメ社会。これはそんな、格差のない平等社会だったっけ? もちろんちがう。王様が

                                                          「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服? - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                        • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                          その昔、荒俣宏だったかで、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』をほめていて、その後高山宏が、ニコルソンとかの紹介で観念史をいろいろもてはやしていた頃に、読もうかと思って邦訳を買って取りかかった。 存在の大いなる連鎖 (ちくま学芸文庫 ラ 10-1) 作者:アーサー・O. ラヴジョイ筑摩書房Amazon が、これ本当にひどい翻訳で、何を言っているのかさっぱりわからない。で、原書を見てみたら、なんだ、ずっとわかりやすいじゃないか。 訳者はおそらく、著者が何を言っているのかまったく理解できていなかったと思う。最初の一章をまず訳してみたので、まあ暇な人は読んで見てくださいな。持っている人は邦訳版と対比してみるのも一興かとは思う。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第1講:観念史とは何か? 言っていることは、全然むずかしくないのだ。人は「すべては一つ!」とか「世界に1人で立ち向かうぜ」とか言うと、理屈もな

                                                            ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                          • お年玉にしてはショボいが:アダム・スミス『国富論』8章まで (その後9章まで) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                            その昔、1999年にプロジェクト杉田玄白をたちあげたときに手をつけたはじめた、アダム・スミス『国富論』、4章くらいまでやってその後ほとんど進んでいなかったが、この4日ほど気晴らしでがーっとやって、8章まで終わった。これで第一巻の半分くらいになる。10章と11章がやたらに長いんだよ。(その後9章も終わった) アダム・スミス『国の豊かさの性質とその原因についての検討』 89章まで (pdf, 1.1MB) アダム・スミス『国の豊かさの性質とその原因についての検討』 89章まで (epub, 0.2MB) お年玉にしてはショボいが、まあ新年に暇なら、読んで罰はあたらないと思うぜ。しかしアダム・スミス、こうして見ると本当にいろんなこと考えていて、制度の影響とかインセンティブの影響とか、貧困削減の重要性とか労働争議問題とか、人口との関係とか、あれもこれもすでにここにあるというのはスゲえもんだ。経済成

                                                              お年玉にしてはショボいが:アダム・スミス『国富論』8章まで (その後9章まで) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                            • オーウェル「バーナム再考:現状追認知識人の権力崇拝とその弊害」(1946) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                              Executive Summary ジョージ・オーウェルが、第二次世界大戦中および大戦後に人気を博した通俗評論家バーナム『管理職革命』『マキャベリ主義者たち』を徹底的に批判した書評的エッセイ。バーナムは、マキャベリを引き合いに出して、政治は常にエリートのだましあいの権力奪取で大衆は奴隷、イデオロギーなんて大衆動員の口実、パワーこそ正義、と冷徹なリアリストを気取ってみせた。この見立てを元に、バーナムはドイツが勝っているときはナチスこそ新世界秩序の盟主、ソ連なんか一撃でおしまい、抵抗するな、受け入れよと説いたくせに、数年後にドイツが負け始めたら、ソ連最強でスターリン社会主義が世界を支配する、と手のひら返しを演じて見せた。だがこれは「知識人」にきわめてありがちな態度で、彼らに蔓延する敗北主義の根底でもある。「リアリズム」と称しつつ、臆病な現状追認の権力すりより行動でしかないのだ。根底にある社会の

                                                                オーウェル「バーナム再考:現状追認知識人の権力崇拝とその弊害」(1946) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                              • ハーバート・サイモン『意思決定と合理性』の翻訳がひどすぎなので、訳し直してあげました。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                                ハーバート・A・サイモンって個人的にとても好きなんだけれど、こないだふと『意思決定と合理性』という短そうな本を手にとったら、いやあ、唖然としてその後ワナワナするくらい翻訳ひでえわ。 意思決定と合理性 (ちくま学芸文庫) 作者:ハーバート・A. サイモン発売日: 2016/01/07メディア: 文庫 このひどさについては、アマゾンのレビューでさんざん書かれている通り。ちゃんと自分で読んで意味がわかるように訳せよー。 あまりに腹がたったので、原書を買って冒頭部を自分で訳しはじめてしまったわ。 ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』 冒頭十ページほどだけど。アマゾンレビューで具体的に挙げられている問題箇所は含まれてる。細かい話ではあるけど、そんなわかりにくい言い方は何もしていないと思うんだけどなー。 タイトルは、理性じゃなくて合理性にしたほうがいいかな。やりながら考える。最後まで続くか

                                                                  ハーバート・サイモン『意思決定と合理性』の翻訳がひどすぎなので、訳し直してあげました。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                                • Hiroo Yamagata on Twitter: "福島原発の事故後、予防原則と称して日本国内の他の原発を止めたために電力価格があがり、暖房を切った人が増えてずっと多くの人が死んだとの研究論文。 https://t.co/outNX4exuL"

                                                                  福島原発の事故後、予防原則と称して日本国内の他の原発を止めたために電力価格があがり、暖房を切った人が増えてずっと多くの人が死んだとの研究論文。 https://t.co/outNX4exuL

                                                                    Hiroo Yamagata on Twitter: "福島原発の事故後、予防原則と称して日本国内の他の原発を止めたために電力価格があがり、暖房を切った人が増えてずっと多くの人が死んだとの研究論文。 https://t.co/outNX4exuL"
                                                                  • クレクレくんの要求と自分の実験を兼ねて、正月にいくつか電子ブック化 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                                    あけおめ(死語)。 各種の翻訳の公開がpdfなのが気にくわねえとかいうケチがついて、なんでも若者はepub形式だそうで、pdfなんざ加齢臭で読んでいただけないそうですよ。悪うございましたね。epubは昔、少し検討したんだけれど、確か日本語だと注かルビが処理できないというので、これは使えないなあと思って放置したような記憶がある。が、進歩したとのことだし、久々に(正月早々)いくつか実験してみた。 いちばん楽な道を、と思ってpdfからebookに変換してくれるソフトやサイトを試してみたけど、使い物にならないレベル。pdfの折り返しを全部文の終端扱いしてくれるし、ヘッダやフッタが全部途中に入り込む。 次に latex ファイルをebook形式に変換できるはずのtext4ebookが、すでにtexliveのパッケージに入っていたので試してみたけれど、エラーが出て中断。細かく原因チェックしてもいいんだ

                                                                      クレクレくんの要求と自分の実験を兼ねて、正月にいくつか電子ブック化 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                                    • 現代人が今、ケインズ「一般理論」を知るべき理由

                                                                      コンテンツブロックが有効であることを検知しました。 このサイトを利用するには、コンテンツブロック機能(広告ブロック機能を持つ拡張機能等)を無効にしてページを再読み込みしてください。 ✕

                                                                        現代人が今、ケインズ「一般理論」を知るべき理由
                                                                      • cakes(ケイクス)

                                                                        cakesは2022年8月31日に終了いたしました。 10年間の長きにわたり、ご愛読ありがとうございました。 2022年9月1日

                                                                          cakes(ケイクス)
                                                                        • クルーグマン「ミレニアムを解き放つ」:この道はいつか来た道 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                                          先日、「資本主義の行き詰まりがあちこちで見られる中で新たな経済思想は〜」みたいな話をきかれて、ぼくはちょっと言葉に詰まった。というのも、資本主義がそんなに行き詰まっているとはぼくは思っていないから、なのだ。 それで、ちょっと以前読んで気になっていたクルーグマンの2000年の文章を掘り出して訳してみました。 cruel.org たぶんいまのクルーグマンは、掘り出されたくない文章じゃないかな。一読すればわかるけれど、資本主義と市場原理の勝利を明確にうたい、それ以外の経済体制はほぼ否定されたと断言する文章だ。もちろんぼくたちはこの後で、2007-9年のリーマンショック/世界金融危機に直面している。この文章にあるほどの楽観論をいま抱くのはむずかしい。たぶんクルーグマン自身もそう思うはず。 たぶん現在なら、やっぱこれを書いた時期でも歪みはたまりつつあって、格差は急激に拡大していて、環境が云々で、こん

                                                                            クルーグマン「ミレニアムを解き放つ」:この道はいつか来た道 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                                          • ラジオトークの存在意義などについて - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                                            なんかこんど、ラジオのレギュラーコメンテーターやることになったのよ。 www.joqr.co.jp サイトには出ていないけれど、ツイッターに出たからすでに解禁なんだと思う。番組全体が少し時間が遅れて長くなるとのこと。そしてその情報によると、山形は火曜の7:45あたりから、とのこと。ちなみにぼくの前が田中秀臣で、続いて山形になるらしい。 コメンテーターといってもニュースにいろいろつっこみ入れるだけなんだけど、2月末にゲストに呼ばれたとき、ミャンマーへのODA停止とテキサスの電力問題が主なニュースで、なんだかぼくの守備範囲ピンポイントであれこれしゃべれたので、使ってみようということになったんだと思う。だってミャンマーのODA再開したときの一号案件の一つだった、ヤンゴン配電網整備やってたし、その関係で電力の話はネタがいろいろあるのだ。その意味で、あれはたまたまあの日のネタがラッキーだった、という

                                                                              ラジオトークの存在意義などについて - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                                            • マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』

                                                                              ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々の本が一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、本当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は

                                                                                マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』
                                                                              • Ocean Blue, または安定と成長について - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                                                YouTubeに逃避をしていたら、なんとOcean Blueが今年新アルバムを出していたと知って驚愕。まだ存在していたのか! 昔のよしみで買って聞きました。 Kings and Queens /.. アーティスト:Ocean Blue出版社/メーカー: Korda発売日: 2019/06/28メディア: CD Ocean Blueは、ペンシルベニアのハーシーチョコ城下町出身のオルタナロックバンド。前世紀/全盛期MTVで、ちょうどニルヴァーナが人気を確立してカート・コバーンが方向性に苦しんで、二枚目出して自殺しちゃった頃にそこそこ流行っていた。メロディアスなオルタナカレッジロックで、奇をてらわず非常に優等生的で、常に中堅的な位置づけでドーンと一世を風靡したことはなく、ロックフェスとかでも大トリを張る存在ではないけれど、その二つ前くらいに登場してくれたらすごくうれしい感じ。当時は、いろんなバン

                                                                                  Ocean Blue, または安定と成長について - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                                                • CUT 2006/11 Book Review

                                                                                  連載第?回 大英帝国のスーパーおばさんが見た李朝朝鮮の実態。 (『CUT』2006 年 11 月) 山形浩生 要約: 本書は李氏朝鮮のひどい状況を、イギリス帝国主義下のスーパーおばさんが 19 世紀末に実際に見て歩いた希有な一冊。ただの高圧的たかり屋にすぎない貴族/役人階級と、少しでもがんばるとかえってたかり屋に目をつけられるから、一切努力をしない一般市民の姿は、朝鮮の衰退が朝鮮自身のせいであることをはっきり描き出す。高い文化を持っていた朝鮮を日帝が収奪して衰退させたというのは明らかなウソ。その一方で、本書をひく『嫌韓流』も、日本のおかげでないことを日本に帰着させたりして、うのみにできないこともわかる。 しばらく前に『嫌韓流』という本がベストセラーになって、いろいろ議論を呼んだ。韓国や北朝鮮が何かと第二次世界大戦中のあれやこれやを持ち出して、謝罪と賠償を請求してみたり、内政干渉じみたことを