“ロー・ポジ(ロー・ポジション)”は、カメラの仰角をアオル(上げる)“ロー・アングル”とはちがい、カメラの位置を下げること。ロー・ポジ映画の名手といえば、小津安二郎さんだ。その作品は、カメラをほとんどアオらず、低い位置にすえて、わずかにレンズを上にあげていた。 大人の膝位置よりカメラを低く固定して、50ミリの標準レンズで撮った。静かで観やすい作品が多く、細かい演出を随所に感じる。役者さんたちに対する演出は、(ハードボイルドで)人物の感情が表情にほとんど表れない。 張力のある黒澤明監督の画面が鋭角ならば、小津監督の画面はゆったりとした鈍角。このふたりの巨匠は正反対のような感覚で、対比される。 黒澤監督の作品は、物語のテンポの良さとダイナミックな画面。顔のアップも多く、豪雨のシーンも有名。迫力のある時代劇や人間ドラマ、サスペンスを描いた。 小津作品は、特別な事件が起きたりドラマがあるわけではな