「だって、みんなそうしているよ」「ルールだから、しかたがない」「先生がいってるんだから」、これらの発想がいかに危険なのかを説いた、将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』の書評をライターの武田砂鉄さんに書いていただきました。ある言葉への違和感から考えます。 最近、「よくぞ言った!」と言われる。どんな発言に対してかというと、新型コロナ対策よりもオリンピック開催を優先した政治家たちへの苦言に対して、そんな声が飛ぶのだ。実に不思議だ。そんなの、どこが、「よくぞ」なのだろうか。覚悟なんて必要ない。巨悪を暴いたわけでもない。新事実を突きつけたわけでもない。失政を前にして、これは失政だ、と告げたに過ぎない。これのどこに、「よくぞ」があるのだろうか。 日本社会には、逆らってはいけない、という考え方が濃い。なんだそれ、と感じつつ、正直、どうぞご自由に、とも思っている。ただ、いただけないのは、それと同時に、
この本の出版に際して、PRの対談が版元のWEBマガジンで行われていた。 日没 作者:桐野 夏生発売日: 2020/09/30メディア: 単行本小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は――。 ■推薦のことば これはただの不条理文学ではない。文学論や作家論や大衆社会論を内包した現代のリアリズム小説である。国家が正義を振りかざして蹂躙する表現の自由。その恐ろしさに、読むことを中断するのは絶対に不可能だ。 筒井康隆 息苦しいのに、読み進めずにはいられない。桐野作品の読後には、いつも鈍い目眩が残ると知っていても――。自粛によって表現を奪い、相互監視を強める隔離施設。絶
武田砂鉄さんが2021年2月5日放送のTBSラジオ『アシタノカレッジ』の中で森喜朗氏のJOC臨時評議員会での女性差別発言について話していました。 アルジャジーラも報じる。中東でこのニュースはいったいどう受け止められるのか?>> Tokyo Olympics chief Mori staying amid anger over sexist remark https://t.co/aDL6DlcJLE @AJEnglish — モーリー・ロバートソン (@gjmorley) February 5, 2021 (武田砂鉄)今週は森喜朗さんの会見を取材したTBSラジオ澤田大樹記者が大きな話題になりまして。ラジオネーム「ヒデ」さん。「武田さん、澤田さん。こんばんは。今週、一躍時の人となったのは我らが澤田記者でした。TBSラジオリスナーは歓喜の渦となった一方で、『俺の大樹が世間に知られてしまう!』と
著者:WiMN出版社:文藝春秋装丁:単行本(342ページ)発売日:2020-02-13 ISBN-10:4163911529 ISBN-13:978-4163911526 もう黙らない 体験を自ら告発2018年、当時の財務事務次官が「胸触っていい?」などとテレビ朝日の女性記者にせまったセクシュアルハラスメント事件をきっかけに、メディアで働く女性たちによって発足した組織、WiMN。「被害者が黙らされてきた社会を作ってきたのも、それを変えるのもメディアの責任である」とし、男性社会の中で泣き寝入りし、黙って耐え、潰されてきた経験を自ら語り、耳を傾けたのが本書だ。 記者クラブという名の「ホモソーシャル(おっさんクラブ)」のノリに苦しみ、「女性らしいから」という理由で「ですます調」で書くように言われた記者は、毎朝のように「子どもはまだか、作り方は知ってるのか」とからかわれた。 上司が、ある党幹部を「
2月刊、橋本治『思いつきで世界は進む』に関して、武田砂鉄さんにエッセイをご寄稿していただきました。 突然の訃報により、この本のみならず、「橋本治」とは何者だったのかについて、論じていただいております。ぜひともご覧ください。 さて、書評を書くために本書を読もう、と思ったところで訃報が入った。著作をたくさん読んできた。一度だけお会いしたこともある。ツイッターを開けば、偲ぶ声が連なる。追悼文的な内容のほうがいいのだろうか(と、「こういう時に最適な文章とは何か」を模索する自分に苛立つ)と思いながら本書をめくると、しばらくの間、この人がもういなくなってしまった、という現実をすっかり忘れて没頭する。目の前に異物を発見し、その異物がどんな形をしているのかをいくつもの角度から見つめ、どうやったらこの異物を柔らかくほぐせるか、挑発できるか、壊せるか、仲良くなれるかと、しつこく絡んでいく時評コラムに憧れを持ち
武田砂鉄さんと澤田大樹さんが2021年2月5日放送のTBSラジオ『アシタノカレッジ』アフタートークの中で緊急事態宣言下でも夜の会合・会食をやめられない政治家たちについて話していました。 (武田砂鉄)今週1週間は実はその森さんのお話だけじゃなくて。まあ、あらゆることがいろいろあって。あれもう本当に1週間前、10日前なんじゃないかということが実は今週だったりしましたけども。 (澤田大樹)砂鉄さんもツイートされてましたけど。今週、実は国会議員が2人辞めて、3人離党してるんですけど。皆さん、誰か覚えていますか?っていう話をしようと思うんですけど。先週、ちょっと触れたんですけど。元々の問題の始まりは週刊誌報道だったんですけども。与党・公明党の遠山清彦幹事長代理という方が1月に銀座の高級クラブで11時過ぎまで滞在したという風に報じられまして (武田砂鉄)なんかちょっと懐かしいけどね。 (澤田大樹)2週
武田砂鉄さんが2020年5月22日放送のTBSラジオ『ACTION』の中で新型コロナウイルス感染拡大、緊急事態下に安倍政権が発している「言葉」について話していました。 (武田砂鉄)今週、ある本を読みまして。作家で劇作家の井上ひさしさんという方の本を読みました。井上さんは2010年にお亡くなりになって、今年が没後10年ということで。全3巻で発掘エッセイコレクションというのが岩波書店から出てまして。その第1巻が『社会とことば』っていうタイトルなんですけど。『社会とことば』ってのは僕にとって非常に興味を引かれるタイトルなんですけれども。 この中に1996年に書かれた原稿でですね、当時は橋本龍太郎内閣なんですけど。その新しい閣僚の記者会見を見たという上での文章がありまして。それぞれの閣僚がその省庁が抱えている問題をいろいろ述べた後で、その記者会見の締めくくりの言葉が4つの型に分かれているということ
(1)より続く カルチャーはコンプレックスから生まれるのでは、との仮説を立て、数々の文献を読み解きながら考察した武田砂鉄さんの最新評論集『コンプレックス文化論』刊行記念対談。前回、中学時代のヒエラルキーが明かされた武田さんとジェーン・スーさんとの対話は続きます。 ◆◆◆ スー 『コンプレックス文化論』を読んでまず思ったこと、それは「しつこい」です(笑)。私の本って、読書メーターとかブクログとかAmazonのレビューなどで、何の悪意もなく「しつこい」って書かれていることがあるんです。その意味がよく分からなくて「性格的にしつこいからかな? でも、書いてあることもしつこいのかな?」って思ってたんですけど、今回の砂鉄さんの本を読んで、「あ、しつこいって、こういうことか」とわかった(笑)。読者の追体験ができたと思って。この本で取り上げられている中で言うと、私、天パだったし、下戸だし、もともとは奥二重
こちらのブログは身辺雑記ということにしているので、読書感想文なんかもこちらで良いのかな、と思うので(誰に断ってんだろ)書くことにした。 <武田砂鉄著 「紋切型社会」 朝日出版社> (ちゃんと自分で買いました) 2年ほど前にハフィントンポストに武田氏が寄稿した下記の記事を私のブログ(以前のココログ)で引用させて貰った。 「ちゃんとした子どもを作って国力増強!」と連呼する婚外子差別のメンタリティ | 武田砂鉄 このエントリーを題材とさせてもらい、私のブログとして初めてアクセス数を1000(少ないやん)を越えて、場末ブログの管理人としては大変驚いたという、いわくつき(というのも変かな)で、その時からずっと気になっているライターだ。余談だが、その時、はてなでブクマして貰ったということもあり現在に至ってたりする。 ところで関係ないけど、この人の出身大学をずっと「成蹊大」と空目していた。へえ、安倍晋三
タイトルを決めるにあたり、「これは無目的なものなんだ」って言葉を置いたときに、「そうなんだよ、そういうことがやりたかったんだよ」と、輪郭化された感じがありました。(武田) 2019年5月17日、又吉直樹と武田砂鉄によるトークイベント『違和感の居場所 ~芸人とライター、書くときに考えていること~』が、紀伊國屋ホールで開催された。2016年8月から2018年1月まで、東京新聞および中日新聞の紙上で、全54回にわたって往復書簡を交わしていた2人。それを書籍化した『往復書簡 無目的な思索の応答』(朝日出版社)が今年3月に発売され、その刊行記念として本イベントは行なわれた。 じつは、この日までに2人が直接顔を合わせた回数は片手で数えられるほど。この日も2人は開演直前に会場入りし、打ち合わせもないままにイベントはスタートしたという。 武田はステージに現れるなり、「『無目的な思索の応答』というタイトルな
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