数々の苦労を経て、やっとのことで手に入れたプロレスラーの地位。しかし、発覚した母の借金、そして父の自殺……。 廃業を決意し、行く当てもなくさまよっていた井上勝正は、いかにしてカリスマ熱波師になるのか――。波乱万蒸の人生、後編。 <「泣き叫ぶ母と父を下ろして……」イジメ、父からの暴力、闇金、そして……カリスマ熱波師の人生は壮絶だった から続く> ◆◆◆ 父の自殺をきっかけに、人生の階段を降りかけた井上を押しとどめたのは、プロレスの仲間達だった。 「親父のことを電話で伝えたら、当時の登坂栄児統括部長(現・大日本プロレス社長)が絶句して嗚咽しちゃって。『井上さんがプロレスできなくなるというのは、絶対させない』って言ってくれましたね。他にも色んな人から電話をいただきました。世話になっている方々に悲しい思いをさせるのは苦しかった。 後になって母親とふたりで話した時に、『あの時は大変だったなぁ』だなん