幅広い世代が戦争について考えるきっかけとなった2016年公開のアニメ映画「この世界の片隅に」=1。広島を舞台に戦時中の日常を描いた同作に、約40分の新映像を加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が先週末、封切られた。来年の終戦75年を目前に、これら作品を世に出した片渕須直監督(59)に聞いた。【聞き手・井上知大、写真・滝川大貴】
普通の人々の生活を通じて、戦争中という“一つの時代”を リアルに描いたアニメーション映画『この世界の片隅に』。 この映画の監督・脚本を務めた片渕須直監督に、 作品に込めた戦争と平和への思いを伺いました。 「戦争中であっても、今を生きる自分たちと 重ねられる部分が多々あると思ったんです」 戦争中の人々の生活を考えるとき、私たちはまず先入観で戦争というものに相対していたのではないかと思うんです。 戦争中とは、こんな時代だ。その中で生きていたのは、こういう人たちだと。本当にそうなのだろうか。もう一度捉え直す必要があると考え、『この世界の片隅に』では、戦争中であっても一般の人々の暮らしが特別ではなかった側面はたくさんあるはずだと思い、いろいろと調べて描いているんです。 それによって当時の人々がより身近に感じられるでしょうし、今を生きる自分たちと重ねられる部分が多々あると思ったんです。 例えば、戦争
僕は『この世界の片隅に』を拝見させていただいて、戦争という枠組みで考えるのではなくて、そこで生きている、その中にいる人々の暮らしにフォーカスが当てられ、そこに「片隅に」という言葉に込められている思いを感じました。 大学生が戦争や社会の動きに対して「自分ごと」としてとらえるという話を僕たち自身もしますし、学者や教育者の方もそういう話をよくされるのですが、そうはいってもなかなか自分ごとにしづらいという意見を、セミナーの参加者などから聞きます。『この世界の片隅に』を作る中で、片渕監督ご自身が自分ごとにするという意識を育むためにはどういったことが必要だと感じていらっしゃいますか。 なぜ人ごとになってしまうのでしょうか。それは、当時の人々と現代の自分たちがすごく違うと思ってしまっているところがあるからではないですかね。確かにいろいろな面で違うように見えます。例えば、当時の女性はモンペをはいているし、
アニメ映画「この世界の片隅に」監督 片渕須直さん 61歳 1941年12月8日(日本時間)、日本は米ハワイの真珠湾を奇襲攻撃した。太平洋戦争に突入した日からまもなく80年。当時を知る人の多くが既に他界し、存命者も少なくなっている。「うかうかしていると、あの戦争を理解するための『つかみどころ』をどこにも求められなくなってしまうんじゃないか」。戦時下の市井の暮らしを描いた映画「この世界の片隅に」で監督を務めた片渕須直さん(61)を訪ねると、こんな言葉が返ってきた。 「僕が小学生だった頃は真珠湾攻撃から30年ぐらいかな。『あの先生、航空母艦赤城(あかぎ)に乗っていたらしい』といった話を友達とするような時代だったんですよ。ああいう先生もみんな亡くなっちゃったんだろうなと思うと、ずっと遠くまで来たなと感じますね」。東京都内の製作スタジオで取材に応じた片渕さん、神妙な面持ちである。 赤城とは真珠湾攻撃
長編商業アニメーションにスポットを当て、長編アニメーション映画のコンペティション部門を持つアジア最大の映画祭となる「新潟国際アニメーション映画祭」。マンガ家、キャラクター・メカニックデザイナーとしての顔を持つ永野は監督・脚本を務めた「花の詩女 ゴティックメード」の上映に、主演の川村万梨阿、製作を担当した本映画祭のフェスティバルディレクター・井上伸一郎とともに登壇する。「銀河鉄道 999」「幻魔大戦」で知られるりんたろうは、数々のアニメを世に送り出したプロデューサー・丸山正雄と対談。片渕は「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」、磯は「地球外少年少女」と、監督した自作の上映にそれぞれ登壇する。 「第1回新潟国際アニメーション映画祭」は3月17日から22日にかけて新潟県新潟市で開催。前売りチケットは本日2月1日に映画祭の公式サイトにて販売がスタートした。
ビアンカ・マジョーリーやメアリー・ブレアといったウォルト・ディズニー・スタジオで活動した女性アーティストたちにスポットを当てる『アニメーションの女王たち――ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』が、2021年2月26日に発売。ノンフィクションである本書では、『白雪姫』や『ピノキオ』、『バンビ』などさまざまな作品に関わりながらも、歴史から忘れ去られた女性たちの創造性と苦闘が明かされていく。 本書の発売を前に、『アリーテ姫』や『この世界の片隅に』などのアニメーション作品を発表してきた片渕須直に本書に関連したインタビューを実施。片渕が関わった日米合作映画『NEMO/ニモ』の話から始まり、ディズニーのアニメーターとの交流、ウォルト・ディズニーの印象の変化、日本とアメリカの制作環境の違いなどについて語ってもらった。また片渕自身が制作してきた作品の背景にある考えや、日米の制作環境の違いを経
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