芥川龍之介の『羅生門』をご存知だろうか。国語の教科書に載っているので、ほとんどの人が一度は読んだことがあるだろう。 名短篇は数あれど、羅生門ほどお手本に相応しい短編は他にない。例えば『走れメロス』は「行って帰って行く」という変わった構造をしているし、『注文の多い料理店』はショートショートのようなアイデア重視の作品、『山月記』は途中で視点人物が変わるといった風にどれも真似するには向いていない。一方、羅生門は行って帰ってくることで成長するという物語の基本パターンに忠実で、要素も必要最小限に切り詰められているので初心者が真似するのにぴったりだ。 羅生門のあらすじは以下のとおりだ。 1下人が羅生門の下で雨やみを待っている。 2下人は主人から暇を出されて行くあてがない。生きるためには盗賊になるよりほかに仕方がないが、決心がつかないでいる。 3下人は夜を明かすために楼の上へ上がる。 4そこでは死骸がご