テクノロジーの発達に我々ができるのは身を委ねることのみ ――他に菊地さんが興味を持たれているAIの音楽的な動向があれば教えてください。 菊地:今のAIの進歩で最大のものはネクスト・ボーカロイド、つまり「声」。初音ミクとかってアニメ文化と密接なのでアンドロイドのようなところがあり、それがまたよかったのですが、少し前に出た「Synthesizer V」がすごくて。このソフトには「ジェンダー」というパラメータが含まれていて、男っぽくも女っぽくも中性的な声にもできるし、「テンション」というパラメータを上げれば歌い上げてくれます。現行モデルだとラップもできて、新音楽制作工房で上がってきた曲はもう人間が歌っているとしか思えない。 だから、デモ音源に仮の歌を入れる「仮歌」の仕事はなくなると言われてますね。松田聖子さんの「ガラスの林檎」(1983年)の仮歌を作曲者・細野晴臣さんが歌った時代に始まり、今のシ